『女たちの山 シシャパンマに挑んだ女子隊9人の決算』 落合誓子/著
山と渓谷社 山渓ノンフィクションブックス
『女たちの山 シシャパンマに挑んだ女子隊9人の決算』は、
絶版のうえ、図書館にもなかったので、ネットで中古本を買ったのですが、
読めば読むほど、重苦しい気分になってしまいました。
著者の奥村誓子さんは登山隊とは関係のないライターで、
この本は、隊長の田部井淳子さん初め隊員9人と、
事情により参加を取り止めた2人から取材したルポルタージュです。
日本女子登攀クラブの田部井淳子さんが、
エヴェレスト登頂に成功したのは、1975年のでしたが、
田部井さんを隊長とした、シシャパンマ(別名ゴサインタン 中国 8,027m)登山は、
エベレスト登頂の6年後の、1981年のことでした。
(ちなみに、その間の田部井さんの登山(海外)は、
ヤラピーク(5,732m ネパール 1977年)、モンブラン(4,807m フランス 1979年)、
キリマンジャロ(5,895m タンザニア 1981年)です。)
隊長の田部井淳子さん、副隊長の北村節子さん、三原洋子さん、
平島照代さん、永沼雅子さんの5人はエヴェレスト女子登山隊からの仲間で、
最終的には、永沼さんは健康面、平島さんは休暇が取れないという理由から、
不参加となりましたが、
エヴェレスト組の隊員たちと、その他の隊員6人の違いは歴然。
エヴェレスト組の努力や冷静さ緻密さに比べ、
ほかの人たちは小学生でも分かる些細なことまで自分で判断できないし、
男性社会では通用しない甘えや媚びも見せていました。
入山期間、天候、お金の問題を抱え、
技術、体力での差だけでなく、高所での体調と精神力、
極限状態に於いての冷静さや機転、判断力といった理性など、
何を取っても田部井さんにかなう人はいなかったことは、
隊員の誰もが認めることにも関わらず、
結果的に田部井さんだけが登頂したことが、どうしても納得できないようでした。
高所障害による肉体的精神的ダメージも、高度が下がるに従って忘れ、
「隊長は普通はBCにいるものなのに」とか、
「自分は利用されただけ」と後々まで不満を訴えて…
ライターも含め、女性というのは理性では納得していても、
感情では許せないものらしいです。
尊敬はするけれど、自分が惨めになるからか、認めたくはない。
ライター自身、田部井さんに比べての自分のダメさ加減を延々と書きながら、
そして、気さくで自然体の田部井さんを立派といいながら、
田部井さんが立派で、精神的に強いことを、同性として肯定したくないようでした。
ルポルタージュといえども、人間が書いている以上、主観的になるのは当然ですが、
元隊員が書いているのではないので、
実際に隊員が書いた『アンナプルナ 女の戦い7577m』や
『私たちのエベレスト 女性初登頂の全記録』 のような臨場感もなく、
ライターの感情や微妙なニュアンスがプラスされていたようにも思え、
ルポというより、低俗な暴露本みたいで不快になりました。
田部井さんの著書では、「シシャパンマ」については、
触れられていなかったような気がします。
男性がこの本を読んだなら、
「だから女ってイヤなんだよ~」と言うのでは…?
最近のコメント