亡
もしかして…
と、夫が敷かれたもう一方の夜具をめくったところ…
手を取ると冷たい。
脈もない。
「救急車を呼ぶからね」と夫が言うと、
父は微かに頷いたとか。
程なく到着した救急隊員にも手の施しようがなく…
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もしかして…
と、夫が敷かれたもう一方の夜具をめくったところ…
手を取ると冷たい。
脈もない。
「救急車を呼ぶからね」と夫が言うと、
父は微かに頷いたとか。
程なく到着した救急隊員にも手の施しようがなく…
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夫が両親の寝室に入ると、二組の寝具が敷かれていたにもかかわらず、
寝ていたのは父だけだったという。
「お父さん!お父さん!」と揺り起こすと、
父は「おぉ」と微かな声を出しながら目を開いたとのこと。
「お母さんは?」と尋ねると、父は「居るだろう、台所にでも…」との返事。
でも、台所や他の部屋を見回しても、どこにも母の姿はなかった…
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数日経っても母からの電話は掛かって来ない。
こちらから繰り返し掛けても、呼び出し音は空しく鳴り続けているだけ。
さすがに不安になって車で30分の実家に駆けつけてみると、
玄関の鍵は掛けられていて、大声で何度呼び掛けても静まりかえっている。
いつも起床時間が遅いのだから出直そう、
と一旦帰宅し、昼食後、夫が一人で行ってみたところ午前と同じ状態だったという。
皮肉なことに、玄関の引き戸の鍵は、暮れに、母に頼まれ夫が直したばかり。
直す前の「心張り棒」だったら簡単に入れたのに。
(夫からの報告)
ぐるりと裏口に回ってみると裏門の出口も鍵が掛かっていたけれども、
勝手口の戸が少しだけ開いているのを確認したことで
ブロック塀を乗り越えて、ようやく家の中には入れたのだが…
「風邪をひいてしまったから移ると困るから来ないで。
こっちから電話するまで絶対に来ないでよ。
いい?わかった?」
3日の朝8時42分、母より電話があった。
元日と2日は来客も多く、何かと慌ただしい。
3日が母の誕生日ということもあって、
実家へは毎年3日に行っているのです。
これまでにも度々同じような電話はあったから、
「わかった」と素直に受話器を置いたけれど、
まさかそれが最後に聞いた母の声になるなんて…
初めて母の夢を見た。
姪(現在2児の母)の結婚式に出席するため、
広い劇場のようなホテルのような場所で右往左往している私、
でも知っている人が誰一人としていない。
ふと自分が普段着なのに気付き、咄嗟に外へ飛び出し、
夢中で走って家(なぜか私の家ではなく実家だった)に辿り着き、
慌てて衣装を抱え、大急ぎで戻り会場にいる見知らぬ人たちに目をやると、
誰もが、薄物のきらびやかな衣装を身につけている。
その瞬間、抱えているのが喪服(ブラックフォーマル)と分かり、
すっかり動顛した私の視線の先に母の姿が…
着物姿の母はとても美しく60歳前後に見え、
少し高い位置で見知らぬ人たちと並びスッキリ立っていて
胸元には長い数珠かクルスのようなものを掛けている。
私との間には目に見えないバリアのようなものがあるらしく
私が「お母さ~ん、お母さ~ん」
と少女のように大声で叫んでも全く気付いてくれず、
にこやかで優しい笑顔を浮かべ、ずっと遠くに視線を向けているだけ…
そのうち、まるで回り舞台のように、
母たちはすうーっと去って消えてしまった。
目覚めた時、私の頰は溢れていた…
今も…
来年はどんな一年になるのでしょうか…?
2013年が皆さまにとって平和で素敵な年になりますように…!
…私にとっても。
そう書いたのは、ずうっと昔のことのようです。
その時、心のどこかで「素敵な一年にはならない」予感がありました。
期待はいつも裏切られるのに、
悲しいことに、不吉な予感だけは、なぜか当たってしまう…。
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