『旅情』(1955・英/米)
先日、プレミアムシネマで『旅情』の放映がありました。
『旅情』は何度か見ましたが、今回最も共感出来たのは年齢のせいでしょうね?
『旅情』の原題はSummertime、
最近の洋画のタイトルは、原題をカタカナ表示していることが多いようですが、
昔の邦題は文学的でしたね。
ハイミスのアメリカ人女性ジェーン(キャサリン・ヘプバーン)は、
長期休暇をとって念願だった欧州を旅し、憧れのヴェニスに到着…
映写機片手に名所を巡り、一人旅を満喫しているのに、
幸せそうなカップルばかりに目がいってしまう…
言いようのない孤独感に襲われるジェーンでしたが、
アンティークショップを経営している男性レナート(ロッサノ・ブラッツィ)との出会いが…
ショーウインドーにあったアンティークの赤いグラスを購入したことが切っ掛けとなり、
レナートに強引に誘われ、野外コンサートに出掛けますが…
知性的なキャサリン・ヘプバーンのイメージに、
ジェーンの役はピッタリでした。
不倫を嫌悪する潔癖さ、値引きを断ろうとする生真面目さ、
浮浪児マルロに「体にいい物を買いなさい」と小銭を渡したり、
感情に流されることなく、未練を断ち切って帰国するなど、
自分を律することができる強さに好感が持てました。
イタリアの中年男性レナートも、意外に誠実でホッとしました。
誠実なジェーンに感化されたのでしょうか?
きっと「赤いゴブレット」も本当に18世紀のものだったのでしょう。
ジェーンが一目惚れで衝動買いした「赤いゴブレット」と「赤いサンダル」は、
憧れの地ヴェニスで偶然出会った「ひと夏の美しい恋」。
届きそうで届かない「白いくちなしの花」は、掴むことの出来ない「とわの愛」かも…
運河に落ちた時に着ていたドレスも、ウエディングドレスを思わせるような「純白」…
ところで、「水の都ヴェニス」と言いますが、
高い窓から運河にゴミを捨てているシーンがあったように、
多分、生活排水も混ざっているのでしょう。
ヴェニスの名所巡りやサンマルコ広場の活気ある様子は、
旅番組のように見入ってしまいましたが、狭い運河の濁った水面を見ていたら、
何となく悪臭が漂っているような気がして興醒めでした。
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コメント
mimosaさんへ
身形や言動なら心掛け次第で年相応になるでしょうが、
気持ちというのは、それ程変わるものではないようです。私はですが。
それで、年齢を記入する際、“えっ? うそっ?”と思うことも度々です…(笑)
また色々教えてくださいね。
投稿: ミチ | 2012年7月15日 (日) 16:05
そうですよね。私もここ数年で年を重ね見た目も変わっても気持ちは全然変わらないのだと本当にわかりました。
おばあさんになっても変わらないでしょうね。
若い頃はわからなかった。もっと枯れると思ってました(笑)少女の頃の夢もそのまま。現実も生きていますが夢にも生きています。後悔はしないでしょう。
年を重ねたからこそわかる深みや醍醐味も味わいつつ10代前半で大好きだった美しい映画や小説も大切な現実であり夢でもあり。子供の頃見た「小さな恋のメロディ」や10代前半で公開より数年後に見た「フレンズ ポールとミシェル」が今でも一番好きな映画です。切なくも美しい。
「さよならを…」はバーグマンの素敵さを楽しみにDVDを見てみます。
ジョン・モルダ-ブラウンの「早春」はDVDが無いのですが彼とドミニック・サンダ主演の「初恋」はあるのでこれも見たい。原作はロシアのツルゲーネフの小説で「ブラームスはお好き」や「青い麦」や「林檎の樹」などと共に年一回は読みます。映画も名作のようです。どの小説も読み始めた10代終わりより今の方が人の思いの深さがわかってきますね。
でも、宝のように大切な一番好きな映画は1970年頃の子供だった頃のもの。年を重ねてわかる深みも人生の早春や初夏の頃の心も両方大切にしたいものですね。
「旅情」のジェーンの衣装や赤いサンダル、たしかに心情をあらわしてましたね。
投稿: mimosa | 2012年7月15日 (日) 00:14
mimosaさんへ
小説や映画がロマンティックで感動しても、それはフィクションだから…
と解っているのに、虜になってしまうと現実が味気なく感じてしまいますよね。
少女の頃に夢中になったことというのは、どんなに年を重ねようとも、
色褪せることなく、ときめき続けるものではないでしょうか。
この歳になって分かったことですが、年齢や見た目の変化に関係無く、
気持ちは変わらないものなのです。
人生は一度だけ、夢に生きるか現実に生きるか…自分次第。
『さよならをもう一度』はDVDになっているはずです。
ロジェとシモン(映画ではフィリップ)は原作より印象が悪いかもしれません。
バーグマンの衣装はキャリアウーマンらしくとても洗練されていて素敵でしたよ。
『旅情』のヘプバーンの衣装も、心理状態を表していて良かったと思います。
「青い麦」「早春」は未だ見ていません。
サガン、コレット、懐かしいですね。
投稿: ミチ | 2012年7月14日 (土) 22:27
この映画もイングリッド・バーグマンの「さよならをもう一度」と同じく中学生の頃から見たかった映画でこちらは、数年前にDVDで見ました。
良い映画でしたね。キャサリン・ヘップバーンは私も大好きな女優さんでこの映画での役柄も知的で誠実で潔くよくて、でも、恋には奥手で乙女のようにロマンチック。でも、人生の苦さはわかるほどには生きてるから、美しい思い出のまま終わらせたのでしょう。
数年前に自分も40代に入ってから見てよかったと思いましたよ。共感できます。ただ、当時の精神状況が不安定だった為に見た直後にかなり落ち込みました(苦笑)
10代前半の映画少女で夢いっぱいでも、自分が中年以降も独身で恋も少なく年下の男性に恋して「私は年なのね」と思うことも予感してた気がします。だから、「旅情」や「さよならをもう一度」に惹かれたのかも。ビデオも無い時代に映画雑誌の写真と粗筋と映画評論家の素敵な解説のみで想像を広げていた時代、後で見られた映画もありますが「さよならを…」のように未だ見られない映画も。
クロード・オータン・ララ監督の「青い麦」(コレットの原作は毎夏読みます)や美少年ジョン・モールダーブラウン主演の「早春」など見たいですね。
「ブラームスはお好き」のシモンは仕事はいい加減(当時のフランス中産階級はあんな感じだったのか?)でしたが、ストーカーチックな行動も純粋で一途だったので小説では素敵でしたが、だらしなく弱い部分も。中年の彼は身勝手だけど男ってこうね、なんて思わせる人でした。
投稿: mimosa | 2012年7月14日 (土) 16:08