『乳母車』(1956・日活)
小中学生当時、石坂洋次郎の小説の映画化が多かったので、
クラスの女子の間で流行り、私も何冊か読みましたが、
(『若い人』『寒い朝』他)なにしろ大昔のこと、内容の記憶はありません
『乳母車』は更に古い映画、初めて見ましたが、
新しい理想の女性像なのか、石坂洋次郎作品のヒロインは屈託無く、疎明で、活発で、
理路整然としていて、言い換えれば理屈っぽく、辟易とさせられることも多いです。
『乳母車』の芦川いづみさん扮する女子大生にしても、
行動的で育ちも良いのですが、首を傾げたくなる場面もありました。
例えば、夫に妾(二号さん)がいて女中付きの妾宅まであることを知りながら、
怒りもしない母親に対し、
「お父さんに文句を言わないお母さんはずるい、打算的だわ」と意見したのに、
自立するつもりで別居した母を騙して父と妾に引き合わせただけでなく、
「赤ちゃん(妾の子)に罪はない…私の可愛い妹…
お母さんが家に戻って、赤ちゃんの世話をしてくれるのが最良の方法…」
などと言い出すのですから…
裕福な家庭に育った一人娘には、
母親の女として妻としての屈辱が、まだ理解できないのかも…
と言うより、原作者も監督も脚本も男性ですから。
その女の敵とも言える父親役が宇野重吉さんでしたが、
イメージに合わない気がしました。
父の妾(新玉三千代さん)の弟役が石原裕次郎さん。
私は裕次郎さんはあまり馴染みがないのですが、台詞が聞き取りにくく驚きました。
内容そのものは今一つでしたが、
中原淳一のスタイル画のような芦川いづみさんの衣装(パラシュートスカート)が
とてもお洒落で、仕立てていた時代の方がエレガントで素敵だったと
改めて気付かされました。
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