『祇園の姉妹(きょうだい)』(1936・松竹)
『祇園の姉妹(きょうだい)』(監督・溝口健二)は面白い作品でした。
男の身勝手にも文句を言わず、流れのまま生きる姉の「梅吉」、
女学校を出ていて勝ち気な妹の「おもちゃ」。
男を憎悪する「おもちゃ」は「男なんかに負けへんで」と男を手玉に取り、
最後には痛いしっぺ返しを受け、
「なんで芸技という職業があるのか!」のようなことを叫ぶ…。
昔は女学校を卒業しても、就職する人は僅かで、
花嫁修業をして、お見合い結婚するのが一般的だったのでしょう。
女性の職業は限られていて、芸妓の姉をもつ「おもちゃ」にとって、
経済的に自立出来るだけの職業の選択は無かったのでしょう。
妹の学費は姉が出したのでしょうが…。
祇園が舞台なのに華やかなお座敷の場面も無く、
ほとんどが薄暗い路地や、殺風景な姉妹の家の中でした。
家具といえば、箪笥、鏡台、茶箪笥、長火鉢ぐらいで、
座布団にはカバーはありません。
昔の日本の家の中は、あんな感じだったのでしょうね。
当時は着物が基本ですが、洋装の場合でも下駄履きだったりします。
私の世代では、「洋装に下駄」は全く驚きませんが、
「洋装に日本髪」には、さすがにギョッとしました。
「おもちゃ」役の山田五十鈴さんは、撮影当時18歳だったそうですが、
役作りとはいえ、喋り方から身のこなしまで、とても18歳とは思えませんでした。
それにしても、「おもちゃ」という源氏名は、いかにも象徴的ですよね。
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