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『親友交歓』

20111215 『ヴィヨンの妻』 太宰治/著
新潮文庫
(『親友交歓』『トカトントン』『父』『母』『ヴィヨンの妻』
『おさん』『家庭の幸福』『桜桃』)

太宰治の短編小説の『親友交歓』は、
又吉直樹さんが、「読んでいて思わず笑ってしまった」という作品ですが、
私も同じく笑ってしまいました。

罹災し、妻子を連れて津軽の生家に疎開していた時のこと、
小学校時代の同級生の平田という男が訪ねてきて、
「酒を飲ませろ」「かか(妻)にお酌をさせろ」などと無理を言い、
井伏さんに飲んでもらおうと大事にしておいた高価なウイスキーを飲んでしまった挙げ句、
<私>の兄が政治家と知りながら「政治家は嫌いだ」と言いたい放題言い、
眉唾な武勇伝や、お門違いなお説教をした挙げ句、
帰り際には、<私>の耳元で「威張るなよ!」と囁いた。

平田は無神経を通り越して、傍若無人を絵に描いたような男ですが、
迷惑で不快の極みのはずなのに、どこか楽しんでいるようにも感じられるのです。

日本人の多くが<私>タイプに思えますが、意外に身近に<平田>タイプもいて、
「あるあるネタ」ではないですが、「そうそう、いるのよね、私の知っている人の中にも…」
と、一度ならず自分も経験しているからこそ、笑えるのかも知れませんね。

では、笑えない人は<平田>タイプ…?
でも、そういう人に限って、全く自覚していないから困るのですよね。

『親友交歓』(青空文庫)

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