『エル・スール』(小説)
『エル・スール』
アデライダ・ガルシア・モラレス/著
野谷文昭・熊倉靖子/訳
インスクリプト 2009/2/18
『ミツバチのささやき』のついでに録画し、期待もせず見た『エル・スール』でしたが、
途中から父親のミステリアスな眼差しに引き込まれてしまいました。
しかも父の死の謎が明かされることなく、
エストレリャが<南>に旅立つところでラストを迎えてしまったので、
気になって仕方ありませんでした。
監督は、その先も撮る予定だったそうですが、
何らかの理由で果たせなかったとか…
それならば、是非とも原作を読まなければ、と…。
何となく「長編」と思っていたのですが、予想に反し短い小説で、
しかも翻訳とは思えない美しい文章だったので、一日で読んでしまいました。
やはり原作は原作、というより原案に近く、
少女の名前も「エストレリャ」ではなく「アドリアナ」、
父は「アグスティン」→「ラファエル」、母は「フリア」→「テレザ」、
「イレーネ・リオス」→「グロリア・バリェ」でした。
その他の設定もかなり違っていたので、「別もの」と感じる人もいるでしょうが、
もし先に原作を読んでいたならば、それ程違和感はなかったかもしれません。
というのも、小説もアドリアナの一人称になっていましたが、
(父に語りかけるような、あるいは父に宛てた手紙のようにも思えました。)
映画では想像するしかなかったエストレリャや、父、母の心理状態も、
小説には(アドリアナの推測としてですが)描かれていたので納得出来ましたから。
セビーリャ(南)で知った父の秘密…
私としては残念な秘密でした。
やはり、映画でそこまで描かなかったのは正解だったような。
謎解きは、しない方が想像の余地がありますから。
。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚
「もし一生のうちに何かしたいことだあるんだったら、
大きくなっても、結婚したり子供を持ったりするんじゃないぞ。
好きなときに死ねる自由を持つためにだけでもだ」
「いいかい。一番性質(たち)が悪い苦しみというのは、
これといった理由がないやつなんだ。
あらゆることが原因になって、とくに何かがあるわけじゃない。
まるで顔がないみたいなのさ」
アドリアナに言った父の言葉…いたく共感!
| 固定リンク
« ハボタン | トップページ | ガラスのミニツリー »
「* 本」カテゴリの記事
- 『早春物語』(赤川次郎・著)(2014.11.06)
- 『すらすら読める枕草子』…2(2014.10.14)
- 『すらすら読める枕草子』 (2014.10.07)
- 「花子とアン」と「アンのゆりかご」(2014.09.14)
- 「アンのゆりかご 村岡花子の生涯」(2014.04.30)
「* 映画」カテゴリの記事
- 「婚前特急」(2011)(2014.11.26)
- 『早春物語』(赤川次郎・著)(2014.11.06)
- 『早春物語』(1985)(2014.11.03)
- 「我が大草原の母」(2010)(2014.07.01)
- イーハトーヴ(2014.03.19)
最近のコメント