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『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』

20110907 『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』
谷川俊太郎
青土社
1975

『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』は、
35年ぐらい前に買った谷川俊太郎さんの詩集ですが、
台所にいる「ぼく」は谷川さんでも、
「きみ」は一緒にその場にいる特定の相手(女性)ではありません。

一九七二年五月某夜、なかば即興的に鉛筆書き、
同六月二六日、パルコパロールにて音読。
同八月、活字による記録及び大量頒布に同意。

という断り書き(?)があるように、
「きみ」は、友人知人(武満徹、小田実、飯島耕一、湯浅譲二、金関寿夫の各氏)だったり、
谷川知子さんだったり、駅で見かけた中学生のカップルだったりするのです。

詩的なつぶやき…
その場にいない誰かに話しかけたくなることは誰にもあるのではないでしょうか。
私にもあります。

ぼんやり空を眺めている時、夜ベッドに入って灯りを消したあと、
あの時、本当は言いたかったのに、言いそびれてしまったこと…
話したくても別の世界へいってしまったあなたに話したいこと…
そして、まだ見ぬあなたにも…

この詩集には、
「夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった」の14編の詩の他に、
「芝生」
「一九六五年八月十二日木曜日」
「ニューヨークの東二十八丁目十四番地で書いた詩」
「My Favorite Things」
「干潟にて」
「シェークスピアのあとに」
「ポール・クレーの絵による「絵本」のために」
からの詩も収められていますが、
その中で私は、「ポール・クレーの絵による「絵本」のために」
のなかの≪黒い王様≫1927という詩に大変共感しました。

永遠に解決されないであろう不条理…

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