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『日本人のように不作法なモンゴル人』

20110105 『日本人のように不作法なモンゴル人』(2005)
ザンバ・バトジャルカル/著
大東 亮/訳
万葉舎

大晦日から元日で読んだ『日本人のように不作法なモンゴル人』は、
面白そうな題だったので借りたのですが、期待通りでした。

著者は駐日モンゴル大使のザンバ・バトジャルカルさんで、
立場上なのか、モンゴルの紹介に多くの紙面を割いていました。
(現在も大使なのかは分かりません。)

歴史、文化、政治、産業、民族、教育、
また、専門が気象や環境問題なので、そちらも詳しく書かれていましたが、
モンゴルと日本の政治や風土や文化の違いは想像以上で、
それぞれの国民性の違いや共通点なども、興味深かったです。

諸外国の人には、日本人、韓国人、中国人の区別が付かないと聞きますが、
同じモンゴロイドのモンゴル人もよく似ていて、
著者も「外国にいる気がしない。日本人と間違われる」と書いていました。
(私はブータン人が一番似ていると思う。)

ところで、目次を見た時、“えっ、そんな!”と思いましたが、
日本や日本人に対しての否定的な箇所はありませんでした。
立場上かもしれませんが…

タイトルの『日本人のように不作法なモンゴル人』にしても、
著者がウランバートルのレストランで食事していた時に、
近くにいた外国人(欧米人?)が言っていた言葉なのです。
「モンゴル人は日本人みたいにハシタナイ」…

麺類を音をたててすする日本人も、
熱い汁料理を音を立ててすするモンゴル人も不作法だ。
と言うことらしい…

民族の価値観や風習の違いを例に挙げ、
日本もモンゴルも、決して野蛮な民族ではないと結論付けていました。

ただ、日本人が外国で、追突された時「すみません」と言ったばかりに、
加害者にされてしまったことから、
自分を卑下したり謙遜したりするのが日本人の美徳でも、
自分の立場を不利にさせるだけなので、
海外においては、自己主張は必要と述べていました。

モンゴルと言うと、大草原を少年が裸馬で疾走する雄大なイメージで、
ゲルや馬頭琴、モンゴル相撲、蒙古斑も…
最近では、朝青龍や白鵬などのモンゴル出身の力士たちでしょうか。

それに、昔、習ったチンギス・ハーンや蒙古襲来も思い浮かびますが、
来日の際、著者が懸念したことの一つが「蒙古襲来」だったとか…

それを教訓にし、記念碑もあって驚いたそうです。
そんな何百年も昔のことを恨んでいる日本人はいません。
と私は思いますが…

<著者紹介>
ザンバ・バトジャルガル(Zamba BATJARGAL)
1945年 モンゴル国オブス生まれ。
ソビエト連邦レニングラード(サンクトペテルブルグ)気象大学・大学院卒業、理学博士。1990-1996年 自然環境大臣。
1992-2000年 世界気象機関(WMO)アジア地域部副代表・代表。
2000年 国連砂漠化対処条約(UNCCD)締結国会議議長。
2001年10月より駐日モンゴル国大使。
気象・環境問題の研究と行政での功績により、モンゴル国の最高勲章である
「赤旗勲章」と「北極星勲章」を受賞。

<目次>↓

はじめに
第Ⅰ部 母なる地、モンゴル人

第一章 私たちは何者か

私の履歴書/モンゴル人は誰の親戚か/モンゴル人は本当にモンゴルか/名づけの混乱/私たちは過去の歴史を知っているか/モンゴル国家制度の伝統/資本主義から逃げたモンゴル、共産主義を拒否した国民

第二章 外交官でない外交官たち

なぜ私が大使に?/農学者外交官/誰がモンゴルからロシア軍を撤退させたか/アメリカ人はモンゴルの歴史を知らないからベトナムを攻撃した/エリートのいないモンゴル/専門外交官は道を開く/大使はパーティに顔を出してウィスキーを楽しむ?/交流関係の新段階

第三章 遊牧民と勇猛民

遥か七百年前に来日した初めてのモンゴル使節/「モンゴルなどという国は聞いたことがない」/モンゴルの血、王の血族/海を持たない海洋民

第四章 地を這ってきた者がやがて空を飛んでゆく

生活は苦しくても捨てられない郷/目を楽しませるものはなくても心惹きつける地/多くの民族が運命を預けた場所/岩木山の影が届く大地/日本はモンゴルより広い/日本人の心の目は鋭い/私たち人類の見つけた道/中央アジアの勃興と遊牧民/救い主はキリスト者?/「天命の鞭」の生誕/桜のような歴史/日本人の母なる地

第Ⅱ部 探索、混迷、道程

第五章 壁と窓、財産と学問

太平洋の霧の中に霞む島/「このサムライめ!」/ロシアの教科書/台風を研究して歴史を発見する/曇った窓/日本の力を弱めるための財閥解体/高度な専門性を持ちながら低賃金の職員/日本の脅迫的手法/日本円が米ドルに肩を並べる/日本は帝国主義国?/日本は何階建てか/モンゴルが自分の窓を持つ/天然資源は発展の障害/学位・利益・効率/イデオロギーと学問/学ぶべきでないもの/渡り鳥がモンゴルに感謝/資源を信じて知恵が薄くなる/マイナスをプラスに変える日本人の奇跡

第六章 体制移行、危機と難題

後退し、飢えたモンゴル/灯りの消える街/文字を知らなくなった市民/黄金時代/映画から飛び出した社会問題/無い製品を売るための競争などはない/二重の錠前/民族のアイデンティティと思想の持続性/宗教とモンゴル/火曜日には医者に診せない/政治改革より重要な意識改革

第Ⅲ部 交流、難題、架け橋

第七章 パートナーシップ

国際関係の軸/モンゴルと日本を隔てた四百年/外交的画策と銃声/火薬が無くても立ちこめる戦争の煙/脂肉と白米/抑留兵と劇場/抑留兵と外交関係/援助からパートナーへ/総合的パートナーシップの可能性はあるか/日本は旧ソ連の替わりになるか/日本では市民が裕福/日本人のお国自慢/日本は社会主義国ではない/フルシチョフとスターリン像/ブラジルのモンゴルブーム/モンゴル語と日本の心/建物は屋根の上でなく基礎の上に建つ/交流関係の基礎工事は強化されている/大衆団体でない大衆団体/交流の行先と援助の形/市場の無い市場経済/モンゴルに「従属」していたソ連/日本の消費者はモンゴル好き/交流を胃袋から頭に近づけよう/日本はモンゴルにとって一時の憧れか、現実的な関心か

第八章 相撲は交流の架け橋だが、ときに障害となる

民間大使/相撲の誕生と歴史/相撲と流鏑馬とモンゴルのナーダム/相撲がオリンピック競技至る道/モンゴル相撲は生活の中から生まれた/モンゴル相撲の枝分かれ/フビライ・ハーンとモンゴル相撲/モンゴル相撲はスポーツではない/力士は野生を呼び起こす/良い力士の性質/モンゴル力士は荒々しく穏やか/権利を学ぶより苦労を学べ/今日の日本の相撲にはモンゴル相撲と同じものはほとんどない/モンゴル力士の成功の理由/モンゴル力士の性格は独特/白鵬の父とワタナベ選手

コラム1 力士たちへの年賀状

第九章 文化の違いと交流の行き詰まり

友人ではあるがパートナーにあらず/日本人は規則をもって遊ぶ/日本人はとても儀礼的/日本では時間が高価/引き受けたなら弱音を吐かない/名が折れるより骨が折れたほうがいい/日本には「職業病」がない/日本ではひとつの仕事を二倍にしない

第Ⅳ部 心に暖かい郷、日本人

第十章 他人の家の窓を通さずに自分の目で見た日本

日本に来て自分を知る/日本に来て祖国を知る/日本に来て故郷に帰ったように思う/日本人はモンゴルに行くと「福岡」に降りて「花」ちゃんにあう/言語のモウコハン/日本に来て「野蛮」になった/日本に来て妻と女性が一層愛しくなった/現実では穏やかなのにスクリーンでは荒々しい女性/日本に来て仏様を信じるようになった/モンゴル兵の魂と壱岐島の発展/モンゴルの襲来は日本人の心に影を落としたか/両国交流に命を捧げたモンゴル大使/日本は最も高額の国/日本人は無料のものに値段をつけて売る/日本人は外国では「野蛮」なほうがいい/ストレス、またストレス/規則にしばられた日本人/日本人は笑い話がわからない/リスクを恐れる日本人/モンゴル人はお酒が弱い/日本の食事で目も満腹/日本人は聴く人のために歌う/モンゴルと日本、踊りと歌/日本のドラマはつまらない/モンゴル人はズボンを履かせ、ヨーロッパ人は脱がせた/日本人のように不作法なモンゴル人/日本では無駄なことにやたらと時間を使う/朝青龍は大統領になりますか

第十一章 先輩と後輩

チンギス・ハーンは本当にモンゴル人か/チンギス・ハーンの記念碑はどこにある/日本人はチンギス・ハーンの遺産相続者である

コラム2 モンゴル雑誌のインタビュー

第Ⅴ部 現在の生活と未来の運命

第十二章 今日満腹して明日飢えないために

日本の外交政策には独自の顔がない/日本は戦争に負けたおかげで発展した/積極外交と空疎な野心は別物/モンゴル人は鯨の肉が好き?/日本人は無駄なものをたくさん建てる?/日本人は自然とは何かを知らない

第十三章 アトランティス文明の伝説

広くても弱点の多いアジア/砂嵐が東京を襲う?/黄砂は太平洋を越えていく/「モンゴル人よ、黄砂を止めてくれ!」/どうやって生活していけばいいか教えて/モンゴルでは一台の車が三本の道を走る/モンゴルのゴールドラッシュ/森がないのに木材を輸出する/黄砂は日本を飢えから救う/太平洋の島はいくつ残るのか/なぜ台風は性格を変えたのか/京都議と水「過剰」の悩み/アジアの穀類は世界を満たす/世界に衝撃を与えた津波/津波はどこででも発生する/人間にではなく人間の敵に宣戦しよう/地球の気候温暖化により凍りつく地域/忍び寄る危機をいかに防止するか/自ら創り上げた苦しみは、自ら消しさることができるはず/燃え上がる文明の炎が消えた理由/アトランティスの伝説は伝説としてだけ残る

参考文献

おわりに ~「西」から「東」は見えるか~

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