『<衣装>で読むイギリス小説』
『<衣装>で読むイギリス小説』
~装いの変容~
久守 和子/著、窪田 憲子/著
ミネルヴァ書房
執筆者が12名ということで重複する箇所もありましたが、
『旧約聖書』創世記のアダムとイヴの「イチジクの葉」から、
ジェーン・オースティン(『高慢と偏見』)、シャーロット・ブロンテ(『ジェーン・エア』)、
トマス・ハーディ(『ダーバヴィル家のテス』)、ジェイムズ・ジョイス(『ダブリン市民』)、
ヴァージニア・ウルフ(『ダロウェイ夫人』)等々といったお馴染みの文学作品の衣装や、
ツイッギーのミニスカートまで、小説を引用しながら、当時の服装の流行だけでなく、
宗教観や倫理観、労働問題、ジェンダー、ビジネスといった観点からも説かれていて、
興味深く読むことが出来ました。
オースティンの頃に流行した超ハイウエストのエンパイアドレスが、
大変薄着だったために風邪を引く女性が続出し、あっという間に廃れてしまったとか、
ヴィクトリア時代の巨大なドレスが如何に重くて大変だったとか、
ヴァージニア・ウルフは服装に関心がなかったなどという記述には、
さもありなん、といった感じで納得出来ました。
多くの名画や写真が資料として掲載されているので、
それらを見ているだけでも楽しいのですが、
文章については、いささか集中力と睡魔との闘いでした。
というのも、12名の執筆者のうち11名が研究者(大学教授、その他)ということで、
読ませるのが目的の作家の文とは当然違うからです。
12時半過ぎの「ベッドに入ってからが読書タイム」ということも理由の一つですけどね。
<目次>↓
、
<目次>
まえがき
Ⅰ 衣装の歴史的な視線
1 裸体と衣装 江河 徹
~楽園を追われて
生理的身体と社会的身体
「はだか」と「ヌード」
<衣装>というペルソナ
2 十九世紀女性の流行意識 岩田 託子
~ファッション・プレートと小説に見る
十九世紀衣生活
ファッション・プレートと流行
ホロインたちの流行意識
3 ヴィクトリア時代の下着革命 戸矢理衣奈
~女性の身体意識の変容
西洋史における下着
ヴィクトリア時代の社会と身体観の変化
帝国主義下の社会と身体意識
4 子ども服の誕生 坂井 妙子
~児童文学とキャラクター子ども服
子どもに優しい文化の変成
氾濫するキャラクター子ども服
幸せな子どもを演出する服
Ⅱ 衣裳物語として読む作品
5 <セクシュアリティ>を身にまとう 久守 和子
~ハーディの後期作品とヌード画
着衣/脱衣の倫理
<衣裳>のエロティシズムを読み解く
着衣/脱衣のサディズム
6 黒い僧服と白い下着 太田 良子
~『ダブリン市民』と『若い芸術家の肖像』を読む
「エドワード朝のドレス」
黒い僧服
白い下着
7 衣服と宝石と脚と 窪田 憲子
~衣装物語としての『オーランドー』
ウルフと衣装とジェンダー
四百年の服飾史
宝石と権力の攪乱
8 衣装と<身体性>で読む現代女性作家たち 鷲見八重子
~脱ジェンダー<モード>で生きる
「赤いドレス」を脱ぎ捨てるとき
「レダの白鳥」と<白>の暴力性
衣装と<身体>という装置(モード)
Ⅲ 装うこと、生きること
9 ドレスメーカーから苦汁労働へ 青木 剛
~お針子小説の変遷
ヴィクトリア時代のイギリス社会とお針子
ドレスメーカーのお針子
苦汁労働
10 ウエディング・ドレスを読む 北條 文緒
~暴力と優しさ
ウエディング・ドレスには暴力が…
ウエディング・ドレスの誕生と潜在
ウエディング・ドレスには優しさも…
11 ダンディたちの意匠 鈴木ふさ子
~落日の最後の煌めき
ダンディズムとは
ワイルドの作品に登場するダンディたち
ダンディとしてのワイルド
12 <不似合い>をめぐるエスキス 中村 邦生
~道化服のために
装い、または組合せの美学
<ふるまい>のテクスチャー
道化服の寓話へ/から
図版・写真出典一覧
牽引
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コメント
イギリス小説やファッションに興味がある方にお薦めの一冊ですよ。
資料として名画も多かったので、絵画好きにも。
投稿: Michi | 2010年12月 9日 (木) 00:04
これはすぐにでも読みたいです!
表紙の絵もとても素敵ですね☆
オースティンの時代の衣装、とても好きですが、やっぱり薄かったのですねf^_^;
投稿: I LOVE アボンリー | 2010年12月 8日 (水) 22:59