『サンダカンまで』
『サンダカンまで』
~わたしの生きた道~
山崎朋子/著
朝日新聞社 (2001)
「山崎朋子」と聞いて分かる人はそう多くはないかも知れませんが、
山崎さんの著書で映画化もされた『サンダカン八番娼館』と聞けば、
多分ご存知の方は多いでしょう。
自伝を書こうとした理由は、
「いつお迎えが来るか分からない年齢になったので、
自分の人生の記録を書き残そう」…と思ったことと、
「おサキさんの人生を記録したことへのお返しとして、
自分の歴史を書く義務があると思った」こと、
また、夫(上 笙一郎さん)の強い勧めがあったからだそうです。
小学校の教師だった山崎さんは、女優への夢を捨てがたく教師を辞め、
美貌を買われモデルのアルバイトをしていたのですが、
その自慢の顔を、無惨に傷付けられたり、
事実婚の相手とは、民族問題で辛い別れを決意したりと、
結構、波瀾万丈だったようです。
被害者意識が強いうえに御自身のことなのに矛盾も多く、
知人のプライバシーや、実母との葛藤などにしても、
故人のことを執拗に書いていて、自己弁護のつもりが逆効果、
正直のところ辟易しました。
何事も言い訳がましくならない方がいい…
…程々が…過ぎたるは及ばざるが如し、です。
<関連図書>
(左)『サンダカン八番娼館』~底辺女性史序章~
山崎朋子/著 筑摩書房 (1972)
(中)『胸より胸へ』~随想~
山崎朋子/著 筑摩書房 (1976)
(右)『からゆきさん』
森崎 和江/著 朝日新聞社 (1976)
『サンダカン八番娼館』と『からゆきさん』は、
近代日本の底辺に生きた女性たちのルポルタージュ。
いずれも昔読んだものですが、あまりに辛すぎて涙無しには読めません。
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コメント
映画、ヒットしたそうなのでちょっとだけ見たい気もします。
でも、もし見たら、“原作と違う”と憤慨するかも…(笑)
投稿: Michi | 2010年11月 7日 (日) 21:48
実話とは聞いていましたが。そうですか、当時の貴重な写真なども多いドキュメンタリー作品ですか。それは突き刺さりますね。
本の場合は自分からその世界にどっぷりはまり込んでいく感になりますから、映画のように受身で軽く流せない。映画は観客の多様なニーズをある程度受入た上で作る部分がありますので、ドキュメンタリー作品の映画化は難しいと思います。
投稿: kiyohime | 2010年11月 7日 (日) 17:21
『サンダカン八番娼館』は小説ではなく題名のイメージとは違って真面目なノンフィクション作品です。当時の貴重な写真も多く資料的価値の高い本で、大宅壮一ノンフィクション賞受賞されました。映画の方は、何となく興味本位に作られているような気がして見ませんでした。
投稿: Michi | 2010年11月 7日 (日) 00:19
サンダカン八番娼館は映画で観た事があります。痛かったです。あれを小説で読むなんて考えられなかったです。
自伝は義務だと思ったか・・。わかるような気がしますが、自分を分析するのは1番難しいですよ。自分の職務経歴書でも時間をおいて読むと笑ってしまう。
投稿: kiyohime | 2010年11月 6日 (土) 22:49