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新美南吉

新美南吉は、宮沢賢治の次に好きな童話作家です。

宮沢賢治の作品は、国籍不明でファンタジックな雰囲気、
そして哲学的でもありますが、
新美南吉は、素朴で暖かくホッとさせられます。

29歳で亡くなるまでに、『おぢいさんのランプ』『ごん狐』『久助君の話』等々、
多くの作品を残していますが、私が一番好きなのは、『てぶくろを買いに』です。

ところで、『名著復刻全集 日本児童文学館』(ほるぷ出版社)の
『おぢいさんのランプ』を読んだ際、それまでと違った印象を受けたのでした。

実は、新美南吉の作品に書かれてあった、
「軍艦」「戦闘」「兵隊」といった戦争に関する言葉が、改ざんされているのです。

例えば、『うた時計』の中には、
「…どういう字書くんだ。連絡の連か」という表現がありますが、
元は、「…どういふ字書くんだ。聯隊の聯か。」なのです。

作家の許可も得ずに、そんなこと許されるの?
と憤慨したのですが、これには時代的な背景があったのです。

巽聖歌によれば、戦時下では、戦意高揚する以外のものは、
発表出来なかったのですが、戦後は逆転し、
厳しいGHQの追求によって、軍国主義的表現の訂正削除を、
余儀なくされたのだそうです。

最近出版されたものは、どうなっているのでしょう?
想像ですが、改ざんされたままのような気がします。

童話に、兵隊や軍艦があってもいいじゃないの?
日本も、戦時下だけでなく、戦前戦後においても、
表現の自由が無かったことを、子ども達に教えるためにも…

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『新美南吉童話全集』 大日本図書
(毎日出版文化賞 サンケイ児童出版文化賞 受賞)
第一巻『ごんぎつね』
  「幼年童話~五十篇~」「ごんぎつね」「正坊とクロ」「張紅倫」「のら犬」
  「丘の銅像」「てぶくろを買いに」「名なし指物語」
 <付>「童謡~四十六篇~」
  作品解説/巽 聖歌
  南吉童話解説/與田準一
  新美南吉・略年譜
第二巻『おじいさんのランプ』
  「おじいさんのランプ」「百姓の足、坊さんの足」「花のき村と盗人たち」
  「牛をつないだつばきの木」「ごんごろ鐘」「和太郎さんと牛」「最後の胡弓ひき」
  「鳥山鳥右エ門」「(劇)病む子の祭」「(劇)ランプの夜」「(劇)春はなし畑から」
  「(劇)ガアコの卒業祝賀会」「(劇)千鳥」
  作品解説/巽 聖歌
  南吉童話作品解説/坪田穣治
第三巻『うた時計』
  「久助君の話」「川」「嘘」「屁」「貧乏な少年の話」「草」「耳」「空気入れ」「決闘」
  「鯛造さんの死」「おしどり」「うた時計」「狐」「かぶと虫」「いぼ」「(絶筆)天狗」
 <付>童話における物語性の喪失/新美南吉
  作品解説/巽 聖歌
  南吉童話における児童心理/波多野完治

『おぢいさんのランプ』 棟方志功/装幀・挿畫
(名著復刻全集 日本児童文学館 ほるぷ出版社)
  「川」「嘘」「ごんごろ鐘」「久助君の話」「うた時計」「おぢいさんのランプ」
  「貧乏な少年の話」

『牛をつないだ椿の木』 巽 聖歌/解説 角川文庫
  「張紅倫」「正坊とクロ」「ごんぎつね」「てぶくろを買いに」「病む子の祭」
  「久助君の話」「川」「嘘」「うた時計」「屁」「ごんごろ鐘」「和太郎さんと牛」
  「花のき村と盗人たち」「おじいさんのランプ」「牛をつないだ椿の木」

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