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『纏足の靴』

20100728 『纏足の靴』~小さな足の文化史
ドロシー・コウ/著
小野和子+小野啓子/訳
平凡社

題名に目が留まり、興味本位で借りてきましたが、
纏足を肯定的に捉えていたのには、少なからず違和感を覚えました。
香港出身の著者だからでしょうか…?

正直なところ私は、纏足そのものが余りに残酷なものなので、
美しく刺繍を施された纏足靴にさえ、全く感動出来ませんでした。

靴にどんな美しい細工が施されていようとも、履いている足そのものが、
夫にさえ見せられないグロテスクな形なのですから…

纏足を始めて知ったのは、パールバックの『大地』、
成功した王龍が、糟糠の妻の阿藍を捨て、第2夫人を囲ったたことから、
自分の大きい足を嘆いた阿藍が、娘に纏足させた場面があり(前後している?)
中学生の私は、かなりのショックを受けました。

『ワイルド・スワン』にも、纏足だった著者の祖母が、
死ぬまで消毒を欠かさず、苦痛に耐えていたことが書かれてありました。

この本の冒頭に、
「…かつて日本は、中国から儒教、漢字、律令制など様々な文化を取り入れたが、
中国にとっては重要だったにもかかわらず、「科挙」「宦官」「纏足」の三つは
取り入れなかった…」とありました。

「科挙」については疑問ですが、
他の二つは、取り入れられなくて本当に良かったです。

最後には、
「…一人ひとりの女性が、自らの思いと周辺の状況に最も相応しい形で、
いつ、どのように纏足するかを判断していたのである…」と…
これにも、説得力を感じることは出来ませんでした。

4~5歳の幼女に、そのような判断力が有るはずもなく、
あくまで娘の将来の縁談のためにと、どんなに激しく泣き叫ぼうと、
容赦なく、母親や祖母がしていたこと…

新しい靴で靴擦れが出来ただけでも辛いのに…

「纏足」「盲妹」「宦官」など、外国人には野蛮で残酷に思えても、
かつての中国の文化であり、生きていくための手段でもあったのでしょうから、
日本人の私が、とやかく言っても始まりませんが…。

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