『ほんとうは日本に憧れる中国人』
『ほんとうは日本に憧れる中国人』
~「反日感情の深層分析~
王 敏/著
PHP新書
<目次>
「はじめに」
第一章 「若者の原風景・生活の中の日本」
第二章 「経済事情が変容し、留学が再ブームとなる」
第三章 「日本観における二重性の形成要因を探る」
第四章 「若い世代に広がる二重性の日本観」
「おわりに」
著者の王 敏(ワン・ミン)…1954年中国河北省生まれ、
1982年来日、現在、法政大学教授、専攻は日中比較研究ほか。
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題名に興味が湧き借りてきたのですが、看板に偽りあり…内容は全く別です。
この題名は、日本人に買わせるための手段としか思えません。
「はじめに」の部分だけは、
確かに日本のアニメに憧れる中国人の少年のエピソードですが、
本文を読み進むに従って、どんどん題名から離れていきます。
まず、食品から化粧品、小説や大衆文化まで、日本に夢中な若者や、
価格が高くても高品質の日本製品を買い求めるプチブルたちの様子が
詳しく書かれています。
でも、“中国では、多くのコピー商品や海賊版が売られている…”
とサラッと言いながらも、知的財産権に対するコメントは一切ありません。
中国人は、日本製を欲しがっていても、日本人のことは嫌い、
というのが著者の持論のようです。
きっと彼女自身が、日本の化粧品を使い、日本の製品に囲まれながらも、
日本や日本人は嫌いということなのでしょう。
著者は、“中国社会は「謝罪の文化」、日本社会は「謝意」の文化」で、
日本人は謝ることが出来ない民族…”と言います。
太平洋戦争でアメリカに負けたにもかかわらず、
日本人がアメリカを嫌っていないのは、アメリカ側が良いのであって、
中国人が日本を嫌いなのは、日本人が謝ることをしないからだそうです。
中国を訪れた日本の首相の多くが、謝意を表したとしても、
中国人は謝ったとは思っていないそうです。
なぜなら、日本の歴史教科書に「侵略」の文字がないこと、
大臣が靖国神社公式参拝するから、というのがその根拠。
靖国を参拝することは、反省をしていないから、
反省をしていないということは、今でも中国を侵略するつもりがある、
ということらしい。
アジア諸国から抗議されているのに、公式参拝を繰り返していたことには、
私自身も不快に思っていますが、
A級戦犯の遺族や関係者が、彼らの支持母体の一部であるからで、
侵略戦争をしようとしているわけではないと思います。
著者だって、そんなことぐらい本当は解っているのでしょうが…
驚いたのは、「中国対日民間賠償請求委員会」が設立されていて、
1,800億ドルの賠償金(日中戦争の)を求める活動が行われているということ…
中国の歴史教育は反日教育ではないし、
日中間の問題は、すべて日本側から発信されているもので、
スポーツの場で中国人が暴徒化するのも、全てが日本側が悪いから…
例えそうであっても、外国には、「政治とスポーツは別」
という発想はないのでしょうか?
カメルーンを応援に旧中津江村の元村長が出掛けたことは、
多くの日本人にとって微笑ましい話題ですが、
こういう感覚は中国人(韓国人)のもあるのでしょうか?
“日本人に比べると、中国人の政治感覚と政治参与は、異常に発達している…”
これ、本当なのでしょうか…?
著者の言う、“中国では”とは、上海をはじめとする都市部のことであり、
“中国人”とは、あくまで都市に住む富裕層や知識人たちのことで、
教育もまともに受けられないような、貧困にあえぐ地方の人たちは、
中国人には含まれていないようです。
あらゆる格差については眼中にないようでし、
その他にも、中国産の偽造品、コピー、海賊版、有害物質入りの食品や医薬品、
少数民族への弾圧、文革の反省、中国人のマナーの悪さについてなど、
中国の問題点については一切触れられていませんでした。
私が最も違和感を覚えたのは、『ワイルド・スワン』に関する記述でした。
著者は、
“日本の歴史書はフィクションばかりだが、中国は違う…
…各国で翻訳され、旋風を巻き起こしたワイルド・スワンは、
中国人の記録好きを裏付けるノン・フィクション作品…”
と結論付けていました。
いかにも「中国で出版された中国語の本」のように書いていますが、
ユン・チアンは英国在住で、『ワイルド・スワン』も
『マオ ・誰も知らなかった毛沢東』も、英語で書かれているのです。
苦難な時代を生きた記録というより、中国の蛮行を告発した本なのです。
と、私は認識していましたが…?
だからこそ、中国では出版されていないのでは…?
結局、悪いことは全て日本の責任で終始している不愉快な本でした。
当然と言えば当然ですが…
でも、中国人(一部の)の考えが解ったと思えば無駄にはならないでしょう。
せめて、そう思わなければ治まりませんから…
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