『日本の曖昧力』
『日本の曖昧力』~融合する文化が世界を動かす~
呉 善花/著 PHP新書
<目次>
第1回 日本文化の基礎…日本人の「曖昧さ」の根にあるもの
第2回 日本人はなぜ旅に出るのか
第3回 「美の大国日本」はいかにして生まれたか
第4回 日本人はなぜ微妙な歪みを愛するのか
第5回 日本の職人はなぜ自然の声に耳をすますのか
第6回 世界で一番平等で安全な社会を築いた国はどこか
第7回 なぜ日本人は穏やかなのか
第8回 日本はいかにして「アジア文明の博物館」となったか
第9回 日本語はなぜ「受け身」を多用するのか
第10回 なぜ日本庭園にいると想像が膨らむのか
第11回 なぜ日本には武士が生まれたのか
最終回 天皇はいかにして日本社会に平等をもたらしたのか
特別書き下ろし講義 世界的な課題としての「日本風」
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著者の呉 善花(オ・ソンファ)さんは、韓国出身の比較文化学者で、
この本は、拓殖大学の講義を紙上再現したものですが、
日本、韓国(朝鮮半島)、中国(大陸)の文化の違いが解って、
とても面白かったです。
日本人は物事をはっきり言わない、主体性がないなどと、
外国人から、批判されますが、
曖昧だからこそ、安全で豊かな国になれたと著者は言います。
また、日本の文化は大陸や朝鮮半島の模倣で、
明治以降は、西洋の模倣だと言われていますが、
実は、アジアや欧米とは、全く異なる美意識や文化の起源は、
縄文時代にまで遡るのだそうです。
大陸から伝来した仏教にしても、日本の寺院の伽藍配置は、
中国や韓国とは違い、左右非対称になっていて、
建築物や庭園にしても、生け花や陶磁器などの好みにしても、
西洋人だけでなく、韓国人や中国人とも異なるのです。
「微妙な歪み」や「わび・さび」「粋」「はかなさ」「もののあわれ」といったものは、
日本独特のもので、色彩にしても、日本人は繊細な中間色を好み、
茶色だけでも約80色、鼠色も約70色あるとか…
そう言えば、数年前、NHKの語学講座の講師たちが、
浴衣姿で出演している番組を見たことがありますが、講師の若い中国人女性が、
「せっかく浴衣を着せて貰ったのに、地味でガッカリした…」
という旨の不満を漏らしていました。
粋で上品で、高級感漂う素敵な浴衣だったのに…
美意識が違うのだから、気に入らなかったとしても仕方ないのですが、
もし日本人だったなら、不満に感じても、本番中には言わないような気がします。
閑話休題
とても興味深かったのは、外国にはない日本語独特な表現法についてです。
例えば、
「泥棒に入られた」「女房に逃げられた」というような受動態の表現(迷惑受け身)で、
韓国語、中国語、その他でも、「…られた」に相当する言い方は無いそうです。
日本語の「…られた」には、
被害者でありながら、「責任は自分にもあった」「迂闊だった」という
反省の気持ちが込められている…
争いを避けようとする日本人ならではの表現法かも知れません。
なお、著者は、日本では、知日派(但し帰化していますが)、
韓国では、親日派(売国奴)と言われているそうです。
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