『夢のかけ橋 ~晶子と武郎有情~』
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『華の乱』と『夢のかけ橋 ~晶子と武郎有情~』 永畑道子/著 文春文庫
『華の乱』の映画は見てないのですが、あらすじを見る限りでは、
原作は、『華の乱』より『夢のかけ橋』の方が近いような気がします。
(『夢のかけ橋』も『華の乱』同様、小説ではなくノンフィクションです。)
有島武郎と波多野秋子のことも詳しく書かれていますが、
文士と愛人の情死といえば、太宰治と山崎富栄が有名…
男性が家庭のある身であっても、不倫は女性だけが罪人とされた時代、
客観的に見れば犠牲者としか思えないのに、太宰が人気作家ゆえに、
言われ無き誹謗中傷の的となった山崎富栄さんの名誉は、
『玉川上水情死行 太宰治の死につきそった女』(梶原悌子/著 作品社)や、
『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』(松本侑子・著 光文社)によって、
一応回復されたと言えますが、波多野秋子さんの場合は、
関係者からの芳しい証言は、殆ど無かったようです。
夫・鉄幹に失望した晶子と、妻を亡くした武郎との間に何があったか?
晶子、武郎の作品や、大量の資料などを、著者独自の仮説を立てながら解釈し、
恋の感情があったのではと推察しています。
仮説はあくまで仮説でしかなく、難解な晶子の歌の解釈も人それぞれで、
「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」にしても、
晶子自身が『歌の作りやう』の中で、
“「君」とは個人ではなく、広く「世の道学先生達」に向けたもの”、
と書いているにも関わらず、世間一般には恋の歌として通っているように、
「君亡くて悲しと云ふをすこし超え苦しと云はば人怪しまむ」や、
その他多くの追悼歌も、真意は晶子のみぞ知る…でしょう。
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