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『上り坂下り坂』

20100506
『上り坂下り坂』 青木玉著 講談社

この本も昨日の『手もちの時間』と同様、青木玉さんの随筆集です。

戦後の物が無い時代、どこからか僅かな小豆と砂糖を工面してきた幸田文さんが、
餅米の代わりに粳米で、最初で最後の「おはぎ」を作ってくれたエピソードは、
可笑しくも泣けるお話でした。(「つぶれたおはぎ」)

著作権の確立していなかった頃の作家と出版社の関係…
印税契約を結んだにもかかわらず、売れないからとタダで出版権を渡すはめになり、
後になって、著者でありながら高額で買い戻したことや、
露伴歿後、ある会社が無断で『五重塔』印刷していると聞き付けた幸田文さんが、
断固阻止させた事実を知るのも家族ならではです。(「裁断機の下の「五重塔」」)

小学生の頃の玉さんが、祖父の作品に親しむようになった切っ掛けも、
心に染みるお話でした。(「祖父の文学との出会い」)

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