『帰りたかった家(うち)』
『帰りたかった家(うち)』 青木 玉/著 講談社
『帰りたかった家』は『小石川の家(うち)』の続編のような随筆集ですが、
内容的には時代が遡っていて、『小石川の家(うち)』では触れられなかった、
幼い頃に別れた父親について綴られていました。
優しい父、しっかり者の母…
でも、一人っ子の玉さんが幸せに過ごした時間というのは、
あまりに短いものだったようでした。
青木玉さんの父(幸田文さんの別れた夫)の三橋幾之助さんは、
数代続いた清酒問屋の三男で、慶応義塾を卒業後、マーケティングを学ぶために、
七年間アメリカ暮らしをした、ハイカラでお洒落な男性ながら、
ただ優しいだけで、窮地に立った妻を守ることさえ出来ない弱い人だったようです。
懐かしく、いつも会いたいと願っていた父は、
離婚後、しばらくして結核により亡くなってしまったけれど
でも、離婚もせず、早死することもなく、ずっと一緒に暮らしたとしたなら、
もしかしたら、蔑み嫌いになっていたかも知れない。
それでも、幸せな思い出だけの父親というのも、悲しいものなのでしょうね。
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