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2010年4月

『底のない袋』

20100430
『底のない袋』 青木 玉/著 講談社

『底のない袋』は、6年前に出版された、比較的新しい青木玉さんの随筆集ですが、
その中の「底のない話」は12篇からなり、
NHK「おしゃれ工房」のテキストに、一年間連載されていた随筆でした。
(思いがけず竹内浩一氏の美しい絵も堪能でき、儲かった気分…)

毎年1月に東京ドームで開催されるキルトフェスティバルにも触れられていたので、
急に親近感を覚え、思わず口元がほころびてしまいました。(「小ぎれ」)

「勝手口のうちそと」では、台所にまつわる、
「包丁、箸、鰹節、酢、たわし、笊、おはち」の七つの随筆があって、
母の幸田文さんに、厳しく仕込まれた様子を垣間見る思いでした。

その他、「過ぎたる時」には、幸田文さんの「斑鳩の記」についてや、
祖父・幸田露伴のことも書かれていました。(「露伴の春秋」)

日々の暮らしの中の出来事や、身の回りの道具類などについても、
簡潔で美しい言葉で綴られていて、読むたびに気持ちがホッとします。

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玉結び

いつも楽しみにしていた「おしゃれ工房」が、
新年度から、「すてきにハンドメイド」になりました。

先週の「はじめてさんのソーイング」では、
生徒役の中山エミリさんが、シュシュ作りに挑戦されていました。

その前に、講師のかわいきみ子さんが、
糸の通し方から、裁ちばさみの使い方まで、丁寧に指導されていて、
どんなテーマの時でもそうですが、必ず何かしら得るものがあるもので、
この時は、正しい(?)「玉結び」の仕方を知ることが出来ました。

その方法とは、
利き手とは逆の手の人差し指の先に、
針に通した糸の端(玉結びを作る方を5mm位)をのせ、
その上に、針先を上にして直角に置き…直角じゃなくても…
針に糸を2~4回巻き付け、
親指と人差し指でしっかり挟んで押さえながら針を抜き、
糸が絡まないように注意しながら、最後まで引き抜きます。

説明が下手で御免なさい。
要するに、縫い終わりの「玉留め」の仕方と同じなんです。

人差し指でクルリとやるより、ほんの少しだけ手間ですが、
確実に綺麗に出来ます。

今まで私は、糸を人差し指に巻き付けて、親指でクルっとよじるやり方でしたが、
…ほとんどの人がそうだと思いますが…
今では、このやり方ばかりです。

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水玉の自動車

買い物の道すがら、いつものようにボンヤリ歩いていると、
視界の隅に、通常には無い色彩が入ってきたので、思わず振り返ると、
今まで見たことの無い奇抜な模様のクルマがありました。

そこは自動車販売所の中古車展示コーナーでしたが、
立ち止まってじっくり見たわけでは無いので、車種も、価格も判らないのですが、
臙脂の地色に、大小の白い水玉模様が配置された、可愛いとも思える車でした。

家人に話すと、一様に首を傾げ、幻でも見たかのような反応をされて…
いくら私がそそっかしくても、そこまで呆けてはいないつもり、
と、検索してみると、その車が「みずたマーチ」(水玉マーチ)だと判りました。
臙脂の他に、いくつかの色違いがあるようでした。

Wikipediaによれば、日産が約2年前に披露した広報用のマーチで、
CMでも流れたとのことでした。

「みずたマーチ」は、「しましマーチ」(縞模様)、「花咲かマーチ」に続く
「レアマーチ」と呼ばれるマーチの第三弾だそうですが、
街中を走っていたら、さぞかし目を引くことでしょうね。

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『日本夫婦げんか考』

最近、「歴女」と称される歴史に詳しい女性がいるそうですね。

歴史書と言うだけで何だか難しそうな気がして昔から敬遠していましたが、
それでも夢中になって読んだ時期もありました。

もう30年位経つのでしょうか…
偶然、書店に平積みされていた『日本夫婦げんか考』(永井路子・著)に目が留まり、
タイトルに惹かれて購入したのですが、期待以上に面白い一冊でした。

いくら史実に基づくとは言っても、講談師と同様、見て来た訳では無いので、
眉唾物と感じる箇所が無きにしもあらずでしたが、
難しい文章は読みたくない私にとっては嬉しい、大変ユーモラスな文章だったので、
『歴史をさわがせた女たち』日本篇外国篇庶民篇
『歴史をさわがせた夫婦たち』などを次々と読んでしまいました。

それらは全て(5冊?)ハードカバーでしたが、
人に貸してしまったために手元には一冊も残ってはいません…

その後、また読みたくなって購入したのが、この文庫本です。
20100427
『日本夫婦げんか考』 永井 路子・著(中公文庫)

<目次>
* われらが祖先はかく戦えり   伊邪那岐命・伊邪那美命
* やきもちニッポン事始め     磐之媛皇后と仁徳天皇
* 天平の王者は奥様本位       聖武天皇と光明皇后
* 優雅な王妃の投石           藤原安子と村上天皇
* 王朝美人は強かった        『蜻蛉日記』の作者と藤原兼家
* うかれ女 離婚始末記        和泉式部と橘道貞
* 浮気のいましめ             茨田重方とその妻
* 過保護パパの代理戦争       高倉帝と徳子・平清盛の場合
* 徒労を重ねた正義派夫人     北条政子と源頼朝
* 妻の根性夫を走らす         日野富子と足利義政
* 不信のなかの裏切り夫婦     織田信長と濃姫
* 戦国“女性外交官”の怨念   徳姫と信康
* 歴史に残る痴話げんか       豊臣秀吉と禰々
* 夫に与えた強烈パンチ       前田利家とおまつ
* 奇妙なけんかの奇妙な結末   細川忠興と玉子(ガラシヤ)
* 貞女の頭脳プレー           山内一豊とその妻
* 忠臣蔵にみる偽装離婚       大石良雄と妻りく

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左 甚五郎

小さかった頃、近所の友達の家に比べて、家には本が沢山ありました。

両親とも、教育熱心とは言えませんが、
伝記ものや童話、絵本、探偵小説などがあって、
兄弟それぞれに、「小学○年生」や「りぼん」、少年向け月刊誌などを、
書店から定期購読していました。

その理由は、多分、書店の経営者が戦争未亡人で、
息子同士が同級生だったからだと思います。

家には、山根赤鬼、青鬼、杉浦茂などの漫画本(今のコミック)もあって、
それらは兄のものでしたが、私も時々読んでました。

微かに覚えているのは、長谷川町子さんの『やじきた道中記』や、
竹内綱義の『赤胴鈴之助』…
でも、題名も作者も分からないのに一番覚えているのは、左甚五郎の漫画でした。

他の職人たちが彫った丁寧で見事な龍は、遠くから見ると、ただのミミズ、
粗削りで嘲笑の的だった甚五郎の龍だけは、まるで生きているかのよう…

「茶運び人形」などの絡繰り人形や、
彼が発明した装置により、多くの人々が恩恵に与ったエピソード…
そして、お話の最後は、当然、日光東照宮の「眠り猫」でした。

20年程前のこと、日光東照宮の「眠り猫」を見る機会に恵まれましたが、
意外に小さくて、ちょっと拍子抜けしながらも、
左甚五郎が彫ったと信じ切って眺めていましたが、
最近、左甚五郎は伝説の人物でしかないことを知りました。

もし実在していなかったとしたら、「眠り猫」は誰が彫ったのでしょう…?

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『新やじきた道中記』上・下巻と『似たもの一家』
長谷川町子/著 (姉妹社)
(子供の頃のではなく、3冊とも昭和47年に発売されたもの)

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『帰りたかった家(うち)』

20100425
『帰りたかった家(うち)』 青木 玉/著 講談社

『帰りたかった家』は『小石川の家(うち)』の続編のような随筆集ですが、
内容的には時代が遡っていて、『小石川の家(うち)』では触れられなかった、
幼い頃に別れた父親について綴られていました。

優しい父、しっかり者の母…
でも、一人っ子の玉さんが幸せに過ごした時間というのは、
あまりに短いものだったようでした。

青木玉さんの父(幸田文さんの別れた夫)の三橋幾之助さんは、
数代続いた清酒問屋の三男で、慶応義塾を卒業後、マーケティングを学ぶために、
七年間アメリカ暮らしをした、ハイカラでお洒落な男性ながら、
ただ優しいだけで、窮地に立った妻を守ることさえ出来ない弱い人だったようです。

懐かしく、いつも会いたいと願っていた父は、
離婚後、しばらくして結核により亡くなってしまったけれど
でも、離婚もせず、早死することもなく、ずっと一緒に暮らしたとしたなら、
もしかしたら、蔑み嫌いになっていたかも知れない。

それでも、幸せな思い出だけの父親というのも、悲しいものなのでしょうね。

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「ブロードウェイの王様」

創作活動に行き詰まった作曲家のルディと、妻で作詞家のベティが、
ホワイト・サンド・ホテルにやって来ました。

芸能人に偏見を抱くトレメインとヘティは、厳しく応対、
しかし、オリビアからブレイン夫妻が、国王ジョージ五世と親しい間柄と聞かされると、
ヘティの態度は一変し、町の音楽会の日取りを夫妻の滞在中に変更して、
夫妻を招待します。

ジャスパーから送られてきた発明品に添えられた手紙には、
「特許を取ってください。いいお金になると思います」とあるだけで、
「元気か?」の一言も無い…
でも、ジャスパーの従妹のセリーナが、設計図をもとに装置を作動させると、

“我が愛する妻へ、
二人の間の距離を思うと、言葉では、とても言い表せない程、
胸が切なくなってしまって堪らない。ただひたすら、君に逢いたい”

というメッセージがあり、
“ジャスパー…ごめんなさい。
ジャスパーがあんまりロマンティックで、涙が出てきちゃう…”

と感動するオリビア。

ジャスパーの複声機を、ブレイン夫妻に売り込もうとしたフェリックスは、
アレックの歌で実験して聴かせますが、
夫妻は複声機より、アレックの歌声に新曲へのインスピレーションが湧き、
アレックに、ブロードウェイで歌手になることを勧めます。

最初は喜んでいたジャネットでしたが、ベティから都会での暮らしぶりを聞かされると、
アボンリーが一番と再認識しますが、夫の夢のために、都会へ行く覚悟を決めます。

実はアレックの夢は“農場をやって家族を養うこと”
ニューヨーク行きは、ヘティから、“落ち着きすぎ”と言われたことで、
衝動的になれること(まだ若い)を、妻に見せたかったのでした。

音楽会当日、イライザおばさんから、ジャネットの本心を聞かされたアレックは、
娘のセシリーと二人で、妻へお詫びの気持ちを歌って、
“ニューヨークには行かない”と伝えます。

ハ長調しか作曲できなかったルディは、
ジャスパーが考案した、自由に移調できる装置のお陰で、
スランプを脱出することが出来ました。

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あれ程芸能人に偏見を持っていたのに、国王と親しいと言うことだけで豹変し、
煙草を吸う真似までして…
ヘティって、権力や肩書きに弱いタイプなんですよね。

子どもの頃からお金に執着心があったフェリックスですが、
複声気を売り込もうとしたり、アレックのマネージャーになろうとしたりと、
一段と金銭欲に拍車が掛かったようですね。

ルディから、
“もし曲が書けなくなったらどうする?”
と言われたベティは、
“心配いらないわよ。あんたは腕のいい大工だもの”
と答えます…
ジャネット、オリビア、ベティ…みんな素敵なご夫人ばかりですね。

歌の上手なアレック・キング、
それもそのはず、アレック役のセドリック・スミスさんは、
カナダのシンガーソング・ライターだそうですから…
でも、吹き替えの江角英明さんも、負けない位の歌唱力でした。

<名言>
「パンを焼くっていいわよ~
朝、まだ暗いうちに起きて、ゆうべ用意したパン種を出して、オーブンに入れるでしょ、
お茶を飲みながら、窓の外を見ていると、日が昇って、草木に、モヤが立ちのぼる。
そして…家中に、焼き立てのパンの香りが…」(ジャネット)

アボンリーへの道<第7シリーズ>
第84話「ブロードウェイの王様」(King of the Great White Way)より

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BUNGO- 日本文学シネマ 『檸檬』

BUNGO- 日本文学シネマ 『檸檬』…

好きな『檸檬』だからこそ見たけれど、
結論としては、好きだからこそ見るべきではなかった。

美しく感じたり、心惹かれるものは、詩や音楽であって、女性ではない。
得体に知れない不安や焦燥に襲われ、倦怠感や虚無感を覚えるのは、
変人だからではなく、肺結核だから…

冒頭から違和感を覚えながらも我慢し続け、
そして5分後には我慢の限界に達し、再生を停止させてしまった。

ドラマは台詞がないと成り立たないのかも知れないけれど、
あのように映像化するだなんて、梶井基次郎に対しての冒涜というもの…

読んだことがない人が、どう感じたかは分かりませんが、
私は怒りを通り越して悲しかったです。

もう、このシリーズは観ません。
憤慨するだけだから…

20100423
『城のある町にて』(角川文庫)と『檸檬』(新潮文庫)
(収録作品は殆ど同じです…)

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『名著復刻全集 日本児童文学館』

検索してみたら、ほるぷ出版の『名著復刻全集 日本児童文学館』には、
第一集と第二集があったようで、私の持っているのは第一集の方でした。

第一集は昭和49(1974)年出版で、総て揃っていますが、
別巻の「収録作品解説書」と、別冊の「名著復刻日本児童文学館奥付」は、
見付かりません。
どうも処分してしまったみたいなんです…金額も覚えていないし…

20100422a 20100422b 20100422c
最も古い、この『小學唱歌集』は、付録のようです。
小学生の教科書なのに…私には読めないわ~

『名著復刻全集 日本児童文学館』(ほるぷ出版社)
20100422d 20100422e  ←『三つの寶』は別の場所に

NO『題名』 著者 [出版社]   初版発行年月日  定價
01.『小學唱歌集 初編』 文部省編  M.14/11 
02.『鬼桃太郎』 尾崎紅葉 [博文館]  M.24/10/11  八錢
03.『当世少年気質』 巌谷小波 [博文館]  M.25/1/17  十二錢
04.『寶の蔵』 幸田露伴  [學齡館]  M.25/7/2  (不明
05.『海底軍艦』 押川春波  [文武堂]  M.33/11/15  三十錢
06.『赤い船』 小川未明  [京文堂書店]  M.43/12/15  五拾錢
07.『猿飛佐助』 雪花山人  [立川文明堂]  T.3/2/15  貳拾五錢
08.『湖水の女』 鈴木三重吉/編  [春陽堂]  T.5/12/21  廿八錢
09.『カチカチ山と花咲爺』 武者小路實篤  [阿蘭陀書房]  T.6/10/28  壹圓參拾錢
10.『トンボの眼玉』 北原白秋 [アルス]  T.8/10/15  壹圓九拾錢 
11.『ちるちる みちる』 山村暮鳥  [洛陽堂]  T.9/8/25  壹圓九拾錢
12.『ふるさと』 島崎藤村  [実業之日本社]  T.9/12/5  壹圓
13.『十五夜お月さん』  野口雨情  [尚文堂]  T.10/6/5  一圓二十錢
14.『太陽と花園』 秋田雨雀  [精華書院]  T.10/7/18  二十錢
15.『一房の葡萄』 有島武郎  [叢文閣]  T.11/6/17  壹圓貳拾錢
16.『大将の銅像』 濱田廣介 [實業之日本社]  T.11/11/1  一圓二十錢
17.『家庭用児童劇』 坪内逍遙  [早稲田大学出版部]  T.11/11/4  貳圓貳拾錢
18.『あやとりかけとり』 竹久夢二/編  [春陽堂]  T.11/12/30  壹圓八十錢
19.『赤い部屋』 宇野浩二  [天佑社]  T.12/2/15  壹圓四拾錢  
20.『西條八十童謡全集 』 西條八十  [新潮社]  T.13/5/25  五拾錢
21.『かみなりの子』 江口渙  [第一出版協會]  T.14/10/10  壹圓六十錢
22.『蝗の大旅行』 佐藤春夫  [改造社] T.15/9/25  參圓五拾錢
23.『三つの寶』 芥川龍之介  [改造社] S.3/6/20  五圓
24.『トテ馬車』 千葉省三  [古今書院] S.4/6/5  九拾五錢
25.『木馬のゆめ』 酒井朝彦  [金蘭社]  S.5/1/10  壹圓三十錢
26.『赤い旗』 槇本楠郎  [紅玉堂書店]  S.5/5/5  六拾五錢
27.『エミリアンの旅』 豐島與志雄  [春陽堂]  S.8/1/25  參拾錢
28.『魔法』 坪田譲治  [健文社]  S.10/7/5  壹圓參拾錢
29.『七階の子供たち』 塚原健二郎  [子供研究社]  S.12/4/20  一圓十錢
30.『風の又三郎』 宮澤賢治  [羽田書店]  S.14/12/20 
31.『お 話 小さき人たちへ』 野上彌生子  [岩波書店]  S.15/12/5  壹圓五拾錢
32.『おぢいさんのランプ』 新美南吉 [有光社] S.17/10/10  一圓二十錢
33.『夕顔の言葉』 壷井榮  [紀文社]  S.19/2/20  二圓十銭(特別行為税相當

余談ですが、
同時期、『名著復刻全集 日本近代文学館』(ほるぷ出版社)というのもあって、
友達が購入してました。

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芥川龍之介『三つの寶』

『魔術』で思い出したのが、芥川龍之介の『三つの寶(たから)』という本です。

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文庫本と比べると大きさが判るでしょ?絵は、“マテイラム・ミスラ君”(『魔術』)
『三つの寶』定價 金五圓
芥川龍之介著 小穴隆一畫
改造社 東京市芝區愛宕下町 昭和三年六月二十日発行

この本には『白』『蜘蛛の糸』『魔術』『杜子春』『アグロの神』『三つの寶』が
収められていますが、今では考えられない程の豪華本なんです。

サイズは、A4とB4の間くらい、表紙はクロス貼り、天は金色、
挿絵は、光沢紙に印刷された小堀隆一の絵が、それぞれ2枚ずつ、
全部で14枚(表紙、裏表紙も含め)が貼られています。

昭和3年の出版で、定価は5円とありましたが、
現在ならどの位なんでしょうか…?

出版前に著者が自殺してしまったために、序文は佐藤春夫が書いていますが
さすがに名文…

他界へのハガキ
芥川君
 君の立派な書物が出来上る。君はこの本の出るのを楽しみにしてゐたといふではないか。君はなぜ、せめては、この本の出るまで待つてはゐなかつたのだ。君が自分で書かないばかりに、僕にこんな気の利かないことを書かせて了ふぢやないか。だが、僕だつて困るのだよ。君の遺族や小穴君などがそれを求めるけれど、君の本を飾れるやうなことが僕に書けるものか。

~とても長いので省略~
ハガキだからけふはこれだけ。そのうち君に宛ててもつと長く書かうよ。
 下界では昭和二年十月十日の夜 佐藤春夫

これが本物の初版本だったなら、かなりの値打ちがあるでしょうが、
残念ながら、ほるぷの復刻本なのです。

1974年に出版された「名著復刻全集 日本児童文学館」(ほるぷ出版社)は33冊で、
『三つの寶』以外の32冊は、保存状態が申し分ないのですが、
この本だけは(サイズの関係上)、保管場所が違っていたために箱の背が変色、
表紙と扉の間の薄紙には湿気によるシミがあって、必ずしも良好とは言えません。

でも、それより悲しいのは、付録の解説本がどうしても見付からないこと。
処分してしまったのかしら…?
もしそうなら、悔やんでも悔やみ切れません。

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BUNGO-日本文学シネマ 『魔術』

「BUNGO-日本文学シネマ」の『魔術』は、『黄金風景』以上に、
原作の世界とは、懸け離れていました。

『魔術』は『赤い鳥』に発表された作品で、
ドラマのような、メロドラマ的な世界ではないのです。
原作には、文子も直哉も登場していないのですから。

一瞬の欲を出したのも、
“…愛する人を守りたいと思うのは、欲なんですか!?”
という部類のものではなく、カンダタや杜子春と同じように、
結局は人間は人間でしかないということだと思うのですが…
原作には無い台詞やシーンばかりで本当に残念でした。

タイトルに、文豪と銘打っておきながら、
ここまで、変えてしまっていいものなのでしょうか?

今後の放送予定は、『檸檬』『冨美子の足』『高瀬舟』『グッド・バイ』です。
谷崎潤一郎は見るつもりはないですが、
梶井基次郎は好きな作家の一人なのでの『檸檬』は見るつもり…
変えられていないことを祈るばかりです。

ところで、番組サイトには、
「文豪を演る!」
誰もが知っている文豪たちの隠された短編小説の傑作を30分のドラマにすることによって、長編大作では味わえない短編の中にのみ隠された作家たちの素顔、真実がそこに。

と、ありましたが、この短い文章には多くの疑問があります。
疑問というより違和感が…

例えば、どの作品も有名で、“隠された”とは言えないと思う。
“短編の中にのみ”というのも、“作家たちの素顔、真実”というのも…

それに、森鴎外、谷崎潤一郎は、確かに文豪ですが、
他の作家は、優れた作家ではあっても、文豪とは少し違うような気がします。

揚げ足ばかり取っているようでは、可愛いおばあちゃんにはなれませんね。

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BUNGO-日本文学シネマ 『黄金風景』

先日、TBS系列「BUNGO-日本文学シネマ」シリーズの『黄金風景』を観ました。

文芸作品の映像化には、期待を裏切られることが多く、
最近は観ないようにしていましたが、
『黄金風景』は太宰治の中でも好きな作品の一つなので観てしまいました。
(出演は向井理さん、優香さん他)

前半の少年時代は、斜陽館で撮影されていたこともあり期待は高まって…
中々良かったです。
でも、原作を読んでない人なら感動されたかも知れませんが、
雰囲気が違うようにも感じました。

のろまさが我慢ならず、いつも女中のお慶をいじめていた少年時代の「私」…
そのお慶と、思いがけず再会するはめになって、
質が悪かった少年時代の自分を思い出し、自責の念に駆られると共に、
使用人だったお慶に、現在の惨めな姿を見られたくないという虚栄心から、
再会を頑なに拒もうとする「私」…

それなのに、「親にも顔を踏まれたことはない。一生覚えてる」
と言っていたお慶は、まるで、自分自身を自慢するかのように、
夫に有ること無いこと言っては、「私」を褒めているではないか!

そのお慶の屈託の無い様子に「降参」、ちっぽけな自分を自嘲し、
まるで呪縛から解き放されたような清々しい開放感を覚える…

ドラマでは、小学生の男の子が、好きな女の子にワザと意地悪するかのように、
若くて美しいお慶に淡い恋心を抱いた少年が、いじめているようにも…

訪ねて来た際の態度も、かつて仄かに思っていた年上の女性に、
御曹司の成れの果てを見られたくないがために、
恥ずかしさと見栄から、殊更避けていたようにも取れましたが…

私の解釈が間違っていたなら、お容赦ください。

それにしても、大正初頭当時、津軽の地主に女中奉公に入る娘が、
あんなに身綺麗で垢抜けていたとは考え難い、
ドラマだから仕方ないのですが。

太宰治の映像化としては、NHKBSの「太宰治短編小説集」の方が、
原作が生きていたように思えました。

20100419
太宰治『きりぎりす』 新潮文庫
(『黄金風景』はこの本に…)

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cool japan 草食男子(Herbivorous Men)

草食男子の特徴とは、
優しい、穏やか、細身、清潔感がある、お洒落、趣味をもっている、
女性にガツガツしない、上司と飲みに行くより自分の時間が大事(飲めない人が多い)、
仕事より家族や友達が大切、車は要らない、車より自転車…

「日本に草食男子が多いのは、平和な国で争う必要がなく、草食男子でも生き残れる国だから」(納得)との意見も…

日本人にだって、草食男子が特別持て囃されているとも思えませんが、
外国人には理解されないようでした。

特に女性には不評で、強そうなフランス人のサンドリンさんだけは、
「威張った古くさいゴリラよりいいわ」(同感!)と言ってましたが、
他の女性たちは、「サムライ」を求めているようでした。

デート時の割り勘も、論外のようでしたが、
毎回キッチリ割り勘にするのも変ですが、収入がありながら、当然のように、
いつも男性に支払わせる女性というのも、好感持てないタイプですが…

草食系でも肉食系でも、いざとなってみないと判らないものですよ。
肉食男子が頼りになるとは限らないし、草食男子の方が意外に包容力があって、
中身は強いのかも知れないし…

男性にしても、女性にしても、普段は優しくて穏やかでも、
内面に強さを秘めている人がいいですね。
普段は肉食系で強そうでも、いざとなった時、逃げ出すようでは駄目ですよね。

ところで、草食男子とは少し違いますが、
昔も、「植物的」タイプの男性はいました。

イメージとしては、格闘技やギャンブルには興味が無くて、
図書館や美術館が似合うような知的な雰囲気、
音楽だったらロックよりクラシックやフォークを好む…
スタジオの中なら中国人のギさんみたいな感じでしょうか…

最後に「草食男子」つながりから、
「弁当男子」(弁当男子が草食系かは疑問)のダンさんが紹介されました。

経済面と健康のため、2年前から、ほぼ毎朝、お弁当を作っていて、
ブログ「弁当ボーイ」で公開しているとのこと…感服の一言です。

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アガサ・クリスティー『復讐の女神』…(2)

ジェースン・ラフィール氏が生前に手配した、
2~3週間の<大英国の著名邸宅と庭園めぐり>バス・ツアーに出発した
ミス・マープルが、<旧領主邸(ドラマには無かった)>に滞在した辺りから、
それまで集中できなかったことが嘘のように、ミステリーの世界に入り込みました。

映画やドラマは原作とは違うものですが、
ラフィール氏は一代で財を成した大富豪で、息子・マイクルは終身刑の身なのに、
ドラマでのラフィール氏はドイツ人の文学者で、
ドイツ軍の脱走兵だったマイケルは、ツアー客の一員でした。

また、原作では甥のレイモンドは登場していなかったし、
ツアーの参加者も、全く別人ばかり…犯人もツアー客ではなかった…

ラフィール氏の手紙の最後には、
「公道を水のように 正義をつきない川のように 流れさせよ (アモス書)」
と書かれていました。

つまり、ミス・マープル(ネメシス)に託したラフィール氏の目的とは、
「無実の息子を救い、真犯人を突き止める」ことだったのです。

ミス・マープルが自らを「正義の使者」と名乗った通り、
彼女の言動は「復讐」とは結びつかない…
やはり、ネメシスは「復讐」より、「義憤」と訳すのが適当だったのではないでしょうか。

ミス・マープルがラフィール氏から受け取った報酬は、2万ポンドでした。
(ドラマでは500ポンド)…時代設定は判りませんが(ドラマは19551年)、
現在の貨幣価値に換算したら、どの位なのでしょうね…?
きっと、相当な額だったのでしょうね。

ところで、ラフィール氏の手紙をドラマで蓄音機にしたのはなぜ?
ラストのミス・マープルの意味ありげな表情も、謎のままだったし…
演出家(又は脚本家)のみぞ知る、でしょうか?

動画サイトで確認したところ、ジェラルディン・マクイーワンの『復讐の女神』より、
ジョーン・ヒクソンの『復讐の女神』の方が、原作に近かったです。

アガサ・クリスティー『復讐の女神』(Nemesis)
乾 信一郎/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫

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アガサ・クリスティー『復讐の女神』

20100416
アガサ・クリスティー『復讐の女神』(Nemesis) 
乾 信一郎/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫

結局『バートラム・ホテルにて』は、少し読んだだけでリタイアとなりました。
それなのに、懲りずに『復讐の女神』を借りてきて…

映画やドラマというのは、原作と違うことが多いにしても、
登場人物や設定など、ドラマとは、かなり違うようです。

まだ読み出したばかりですが、登場人物がとにかく多くて、
それに、一つの会話が大変長く、集中力が保てません…
目は活字を追っているのに、頭には入らない…

でもミステリーですからね、
どんなに些細に思えることでも、後々重要になることかも知れないので、
流し読みは出来ないし…

昼間なのに、常に睡魔との戦いとなっているので、
果たして読み終えられるのか、全く自信がありません。

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アルマイトのお弁当箱…(2)

前に書いた「人形の絵のお弁当箱」について、
殆ど記憶が無いことが不思議で、母に電話してみました。

“また~すぐ忘れるんだから~”と言われる覚悟をしていたところ、

母 「そりゃそうでしょ。だって、あれは、数回しか使わなかったんだから…
   幼稚園の先生に、小さ過ぎるから、もっと大きいのに変えるように言われて…」
…そうだったの!

私 「花瓶の絵が地味で…」
…覚えている方のお弁当箱のことについて、つい、口を滑らせてしまうと、
母 「恥ずかしかった?」
私 「恥ずかしくはなかったけれど…肩身が狭いと言うか…
   そうでも無かったけれど…ただ、みんなのが羨ましくて…」
…言葉を選びながら、しどろもどろ…

母 「その気持ち、よ~く解る…ねえ聞いて!…
   私も小学校に入る時に、
   父親(私の祖父)がリボン刺繍の黒い布製の手提げカバンを買ってくれたけれど、
   他の子のは、ズックの肩掛けカバンだったから、
   嫌がって学校へ行かないと困らせ、みんなと同じカバンを買って貰った…
   リボン刺繍のカバンは、ずっと部屋に掛けてあったんだけど、
   見るのもイヤだった…」
…そう言うではないの!
…私より母の方が主張していたとは、全く意外でした。

…では、なぜ、お弁当箱に限らず、大人になるまで、
私の好みを無視して、自分の趣味で買ってしまったの…?

…私は心の中で呟きました。

きっと母には、「子どもの物は親が決める」もので、
「子ども自身に決めさせる」という発想が無かったのでしょう。

お弁当箱の写真はこちら

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「歴史は眠らない」“国花”から“散華の花”へ

江戸時代の末に、江戸染井村の植木職人によって作られたソメイヨシノは、
明治になって文明開化の象徴として全国に広まった一方で、
日清日露戦争時代とともに、「国花」として軍関連施設には必ず桜が植えられ、

大和男子(おのこ)と生まれては
 散兵戦の花と散れ
”…「歩兵の本領」

と軍国主義に利用されるように…

太平洋戦争時代に至っては、
特攻隊に{山桜隊」「若桜隊」などと名付けられ、
軍服や帽子などの徽章にも桜のデザインを用いられ、
学徒兵に対しても、「軍国の花」(桜)のように、
潔く散る(散華)ことを強要したのでした…

“貴様と俺とは同期の桜
 同じ兵学校の庭に咲く
 咲いた花なら散るのは覚悟
 みごと散りましょ国のため
”…「同期の桜」

10代の学徒兵に、散ることと死ぬことは同じ意味で、
国のために死ぬことは美しいと思い込ませたのでした。

ところで、以前放送していた「世界ウルルン滞在記」のエンディングに
森山直太朗山の「さくら」が使われた時期がありました。
感動的な別れのシーンのあとに流れたのは、

さくら さくら 今咲き誇る
 刹那に散りゆく運命と知って
 さらば友よ 旅立ちの刻 変わらないその想いを今

という「さわりの部分」だけだったと思いますが、
最近では聞かれないような美しい詩に、お気に入りの一曲に加わりました。

…でも、「あれ、予科練の歌?」と言った人が…
私には思いもよりませんでしたが…

勿論、そんな筈はないと信じていますが、
かつては、そんな時代があったことを忘れてはいけないと、
番組を見ながら改めて感じました。

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赤いマーガレット!?

ショール兼マーガレット(マフラーにも膝掛けにも)を編みました。

初夏に掛けてのショール…いえいえ、イメージは、クリスマス直前に、
暖炉の前でロッキングチェアーに掛けて、編み物をしているターシャさん…かな?

なぜ、袖口の付いたショールを、マーガレットと言うのかは知らないけれど、
マーガレットの語源は、ギリシア語の真珠(マルガリーティス)、
ピンク真珠はあっても、赤色(えんじ?からくれない?)はどうなのでしょうか…?
でも、「赤いちゃんちゃんこ」よりはマシでしょ?

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サイズは、約42cm×130cm
糸は、45年前の極細毛糸 25g×10巻…2本どり
かぎ針は、3号を使いました

編み方は、「麻の葉編み」の、つ・も・り…
周囲は、細編みを1段編みました。
糸の繋ぎ方は「機(はた)結び」、間違っても「たて結び」にはしないで。

増減無しというのは、忍耐力が要りますよね~
一週間も掛かってしまいました。

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アガサ・クリスティー 『バートラム・ホテルにて』

頑張って何度も挑戦した『バートラム・ホテルにて』でしたが、
読み終えないまま返却日を迎えそうです。

ドラマの方も、私には、あまり面白く感じなかったことでもあるし、
読むのは、きっぱり諦めた方が良いかも知れません。

短気だからなのでしょうか、とにかく前置きが多すぎて、
ジリジリしてしまうのです。

でも、『カリブ海の秘密』の続編らしい(?)『復讐の女神』は、
ドラマのラストシーンが気になっているので、懲りずに借りるつもり…

原作はマープル・シリーズではない『無実はさいなむ』は、
多分借りないと思います。

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cool japan 睡眠(Sleeping)

公園のベンチでの昼寝、電車やバスで眠る日本人、
中には立ったままで居眠りしている人も…、これ、日本独特の光景だとか。

外国では何かをするために睡眠時間を削るという発想がないそうです。
睡眠時間が短く、労働時間は長い日本人は慢性的な睡眠不足なのでしょうが、
結局、日本が安心な国だから人前で眠ることが出来るのでしょう。

でも、居眠りする国会議員や授業中に居眠りする大学生がいるのも日本、
だとしたら恥ずかしい限り…

ビジネスホテルやネットカフェなど昼寝が出来る「仮眠スポット」があったり、
快眠を追求したハイテクベッドや、蒲団職人が作るオーダーメイド枕、
快適に眠れる深夜バスがあるのも日本だけのようです。

ところで「日本では、掛け布団を何枚も掛けるから重い」との声がありましたが、
掛け布団を何枚も掛けるだなんて、聞いたことがないです。

真冬は毛布を掛けるにしても、掛け布団は1枚じゃなかったの?
…土地柄でしょうか?

重い掛け布団は、考えただけで悪夢にうなされそう…
ずっと羽毛蒲団を使っていますが、子供の頃は母の手作りの、
木綿綿の蒲団を使っていました。
よく広げた真綿を載せる手伝いをしてました。

「仮眠スポット」「快眠を追求したベッド」「オーダーメイド枕」「深夜バス」、
ベストオブクールは「オーダーメイド枕」。

素敵な夢が見られるハイテク枕を開発してくれないかしら…

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アルマイトのお弁当箱

母に会うと、いつも何かしら思い掛けない物を渡されます。

今回は、このアルマイトのお弁当箱でした。

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半世紀以上も昔の、幼稚園の時のお弁当箱…

冬になると、ハンカチで包んだままのお弁当を、
先生が、教室の真ん中にあるストーブ(ガード)の上で温めてくれたっけ…

花瓶に生けられた薔薇の絵を指して、
“この絵が好きでね~”と母は言いました。

へぇ~そうだったの!
私は色の無い地味な絵が不満で、
他の子のカラフルで綺麗な可愛いお弁当箱が羨ましかったのに…
「おかず入れ」も、子どもらしからぬ絵・・・

それなのに、「お人形のお弁当箱」は、全然記憶が無いのです。
間違いなく、私のものなのに…

その後、色んなお弁当箱を使ったけれど、
幼稚園の時のお弁当箱だけが残されていたようです。

母親というのは、我が子が最初に使ったものは捨てられないものなのでしょう。

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鬱金桜(ウコンザクラ)

出掛けたついでに、少し回り道して鬱金桜を見てきました。
鬱金桜は黄桜とも呼ばれることから、名前の由来はターメリックの色なのでしょう。

地方紙の朝刊に載っていたためか、見物人が大勢いましたが…私もその一人、
ウィークデーなので殆どが中高齢者…私もその一人。

神社ということで、お昼時にもかかわらず、飲食風景に出くわすこともなく、
(お弁当は問題ないけれど、酔っぱらいやカラオケは迷惑だわ!)
お目当ての鬱金桜に群がり、ケイタイやデジカメを向けていました。私もその一人。

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ピンクの桜に比べ控え目な樹ゆえに植えられた数も少なく、
それが希少価値を呼ぶ結果となったとしたら、皮肉な気もします。

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好きな山吹が、目立たぬ場所でひっそり咲いていました。
                               …護国神社にて

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童謡と唱歌

新学期だからでしょうか、
毎年この時期になると、童謡が聴きたくなるのです。
今年も例年のごとく、いつも用事をしながら童謡や唱歌を聴いています。

童謡は20代の頃から大好きで、よく、レコードを買っていましたが、
類は友を呼ぶようで、友だちの多くが童謡が好きだったから、
レコードやCDをダビング・編集しては交換し合っていました。

下の『唱歌』は、土居裕子さんの歌声が聴きたいばかりに買ったCDで、
聴く度に、森林浴をした後のように清々しい気分になれるのです。

20100408a 左上『決定版 こころの童謡』(3枚組)
左下『唱歌』
右上『小鳩くるみ ベスト』(2枚組)
右下『愛しき歌』…小鳩くるみ・叙情歌
↓題名

20100408b 20100408c 20100408d 20100408e

童謡歌手は、小鳩くるみさん、松島トモ子さん、川田姉妹、安田姉妹くらいしか
知りませんでしたが、
YouTubeの「doushiyokaさんのチャンネル」には昔の童謡が沢山あり、
大勢の童謡歌手がいたことを知りました。

でも、目的は歌だけではないのです。
古い童謡の絵本を眺めては、いつも癒されているのです。

遙か昔、私にも童謡の絵本がありました。
とても美しい絵本が…

最初のページは、確か、私が一番好きな「朧月夜」、
最後は馬に乗った花嫁さんの「雨降りお月さん」だったような…
なぜ一人で行くのか、なぜ濡れて行くのか…と不思議に思いながらも、
あまりに悲しそうで、お嫁さんにはなりたくないと思ったものでした。

出来ることなら、もう一度、あの絵本にあいたいな…

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お花見

そろそろお花見シーズンも終わり…

「歴史は眠らない」の2回目「江戸っ子と花見」によれば、
平安時代、貴族の間で行われていたお花見が一般庶民の楽しみとなったのは江戸時代で、吉宗が庶民のストレスを発散させるために、花見を利用した結果のようです。

C・W・ニコルさんいわく、
“日本人はみんなと同じ行動をするのが好きで安心する”と…
日本人の誰もが桜が大好きで、お花見をしているかのようですが、
本当にそうなのでしょうか…?

私は未だかつて、お弁当を食べたりお酒を飲んだりするような、
いわゆる「お花 見(宴会)」は一度もしたことがありません。

…人混みが嫌い、お酒を飲まない、食べ物への執着がない、そして花粉症…
私が特別変わり者かと思えば、意外にそうでもはなく、
身近な人たちに聞いた限りでは、お花見の経験はないという人が多いのです。

桜前線、開花情報、お花見風景、ことさらメディアで流すのも、
経済効果をもたらすからにも思えます。
桜の下で大騒ぎしている人の方が、案外、少数派かも知れません。

野人等多く、風流ならず」…柳沢信鴻・『宴遊日記』

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『小石川の家(うち)』

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『小石川の家(うち)』 青木 玉/著 講談社

 “土曜日の昼下がり、五月の光は晴れていい陽気だった。
三十三歳の母と九つの私は、小学校の校庭の藤棚の下にいた。

…なにかおじいちゃまがおっしゃったら、言われた通りにすること、口応えや重ね返事、大きな声で騒ぐこと、やたら動き廻ることも、家から勝手に外に出ることもしてはいけない…”  「風邪ひき」より 昭和十三年(1938年)

幸田露伴の娘である幸田文が、父の歿後に筆を執ったように、幸田文の一人娘である青木玉さんも、母の歿後に筆を執って最初の著書となった『小石川の家(うち)』は芸術選奨文部大臣賞を受賞されたのでした。

『小石川の家(うち)』には、離婚した母・幸田文が玉さんを連れて小石川の祖父・露伴の元に戻った時のことから、母との永久の別れまでが美しい文章で綴られていましたが、家族にしか分からない文筆家一家の暮らしぶりが、とても興味深く感じました。

また、幸田文が父の「終焉」を書いいたように、玉さんも母の終焉を「三日間」と題して書いていますが、孫の目から見た幸田露伴の最期も、「“愛”」で書かれていました。

祖父・露伴だけでなく、露伴の手前からか、母からも理不尽な叱られ方をされたことに、
“…なぜあれ程までに叱られなければならなかったのか今でも分からない…”と、疑問を投げかけていたところは昭和生まれならではなのかも知れません。

母譲りの簡潔で美しい日本語ながら、幸田文に比べ控え目な文体に、玉さんの性格が表れているようで好感が持てました。

幸田露伴、幸田文、青木玉さん、青木奈緒さんと、4代も続く文筆家というのも珍しいような気がします。

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「殺すなかれ ~没後100年 トルストイの遺言~」

ETV特集「殺すなかれ ~没後100年 トルストイの遺言~」を見ましたが、
自分がいかに無知なのか思い知らされました。

“また戦争だ。
かたや殺生を禁じられた仏教徒、かたや愛を掲げるキリスト教徒、
それが野獣のように最も残酷に殺し合う。
誰 もの必要のない苦しみ、人間の欺瞞と愚劣さ、
私たちには必要のない戦争だ……”
                  トルストイ の論文
『汝 悔い改めよ』

トルストイ(1828-1910)と言えば、ロシアというより世界的な文豪で、
『戦争と平和』や『アンナ・カレーニナ』『復活』などは中高生の必読書ですが、思想家としても、徳富蘆花など多くの知識人や学生に影響を与えていたとは知りませんでした。
戦争や暴力を否定し、終生、平等平和思想を貫き、ガンジーなどが継いだことも…

総ての戦争と同じく日露戦争も、領土拡張と覇権が目的なのに、平和のため、朝鮮半島やアジアを守るためという大義名分によって国民は駆り出され殺されたのです。

属する社会で流されるのが簡単な生き方、でもそれは自らの宗教観が許さなかったトルストイ…
遺体は遺言通り住み慣れた森の一角に葬られ、十字架も墓碑銘もなく、
土を盛っただけの墓、財産の総てを放棄、土地も農民に分配するよう遺言した。

“暴力は決して愛とは共存せず
暴力が許されるやいなや愛は否定されます…”

                     (ガンジーへの手紙

 地球上に戦争のない日は来るのでしょうか…?

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Cool Of Cool 2009

クールジャパンも4年目を迎え、
2009年度のベストオブクールから、「ベストオブクール2009」を選びました。

先ずは、2009年度に選ばれた27のベストオブクールを紹介…

多機能の携帯電話、圧縮袋、免震技術、枝豆、シャワーで洗えるウールのスーツ、
色々ありましたね~

日本と外国(特に欧米)の違いも…
「涙を見せるのは自分の弱さを認めること」

「赤ちゃんの時から、両親と別室で寝かすのは“個人として認め自立心を持たせる為”
でも本当の理由は“両親のプライバシーを守る為”」

「お手本通りの綺麗な字を書くと、従順で頭が悪く思われる」

「ガムを紙に包んで捨てるのは日本人だけ」等々…

27の中から鴻上さんが選んだベストオブクール2009は、
「福祉用のロボットスーツ」でした。

鴻上さんの言った、
「痒いところに手が届き、痒くないところも痒いような気にさせ掻いてやる」
は名言ですね。

その他には、
「私が日本人になったと思った瞬間」
「帰ってきた外国人」その理由は
「母国に持ち帰った日本のもの」
の紹介もありました。

<放送時間が変わりましたよ>
BS1 (土) PM  6:00~6:44
BShi (水)  PM  7:00~7:44

<再放送>
BShi(金)[木曜深夜] AM  0:00~0:44
BShi (月)  AM  8:00~8:44

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全然+肯定

先日、「みんなでニホンGO!」というNHKの番組を見ていたら、
全然+肯定」という最近の使い方を取り上げていました。

いつからか、「全然大丈夫」や「全然おいしい」などと耳にするようになりましたが、
私も以前は「全然」のあとは「打ち消し」と信じ切っていたので、
相当、違和感を覚えてました。

私だけでなく、アンケートでは、多くの人が「全然」のあとは「打ち消し」が正しいと信じているようでしたが、これは完全なる迷信なんだそうです。
(「間違い」と断言していた人達も、スタッフの誘導で、無意識に使っていましたが…)
ただ戦前に子ども時代だった世代では違和感を感じない…

明治、大正時代には「全然+肯定」も「全然+否定」同様、普通に使われていて、
実際、森鴎外、芥川龍之介、夏目漱石といった文豪の作品にも見られるそうなのです。

ではなぜ、「全然+肯定」が間違いとされてしまったのか…
戦後、アプレ語と言われた若者言葉を批判した小堀杏奴(森鴎外の次女)が、「全然+肯定」を間違った日本語と断言してしまったた、文部省が、昭和35年、“「全然」は「打ち消し」としたから…

言葉は時代によって自然に変化する、と言いますが、
これに関しては、小堀杏奴さんと文部省が張本人だったわけです。

それはさておき、若者が「全然+肯定」も正しいと知って使っているかは分かりませんが、私自身は、数年前に、間違いではないと知ったのにも関わらず、教育の力は偉大らしく、使うことは有りません。控え室の実験のように無意識に使っているかも知れませんが…

ほかには、「エロ」と「うざい」も取り上げていました。
「エロ」は、80年前には、「かっこいい」「新しい」「いけてる」といったような意味で、
淡谷のり子さんが、「エロ行進曲」をレコーディングされていたのには驚きました。

「うざい」は、人から言われるのは勿論のこと、自分が使うのも嫌な言葉ですが、
東京多摩地区の方言の「うざったい」が変化したもので、
本来の意味は、人間に対してではなく、たとえば虫などがウジャウジャしている様子や、
ぬかるみを歩いた際の不快な感じを表す言葉なんだだそうです。

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アガサ・クリスティー 『カリブ海の秘密』

20100402
アガサ・クリスティー『カリブ海の秘密』(A Caribbean Mystery)
永井 淳/訳 ハヤカ ワ・ミステリ文庫

昨夜は春の嵐…不安で眠れない夜は、ミステリーを…
で、図書館から借りてきた『カリブ海の秘密』(アガサ・クリスティー)を、
今朝5時頃、読み終わりました。

怪しく思える人は犯人ではないのがミステリー小説、
『カリブ海の秘密』も御多分に洩れずでした。

肺炎の転地療養として、甥のレイモンドの強い勧めで、
西インド諸島のゴールデン・パーム・ホテルに滞在中のミス・マープルは、
同ホテルの宿泊客のパルグレイヴ少佐から、回顧談を聞かされるのですが、
話の途中、ある人物を見た少佐の表情が変わり、話が逸らされた挙げ句、
翌朝には死体となって発見される…

ミス・マープルは、富豪の宿泊客のラフィール氏と共に、殺人事件を解決しますが、
この気難しい老人ラフィール氏こそが、『復讐の女神』の仕掛け人なのです。

『復讐の女神』のラストに感じた疑問は、最終章への布石とも取れるので、
クリスティーの死によって三作目が未完となったことから、
ミス・マープルのあの表情の訳も、永遠の謎…

これもミステリーですよね…

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アガサ・クリスティー『ゼロ時間へ』

20100401
アガサ・クリスティー『ゼロ時間へ(Towards Zero)』
田村隆一/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫

『ゼロ時間へ』、読みました。
ドラマで見てしまった原作を読むのは、詰まらないと言うか、空しいと言うか…
でも、ドラマでは省略されていた登場人物や、
張られた伏線の関連性を知りたいばかりに、ほぼ一気に読みましたが。

ドラマとの最大の違いは、ミス・マープルが登場しないことです。
ミス・マープルシリーズではないからです。
では謎解きは誰かといえば、バトル警視という人でした…(ドラマではマラード警視)

老弁護士のトリーヴスが言った「身体的な特徴ですが、
カミラ・トレシリアン夫人(ドラマではカミーラ)の遠縁メリィ・アルディン(メアリー)は、
前髪に白髪の一房がある。

テニスプレーヤーのネヴィル・ストレンジは、
左手の小指が短く、右手の小指が長い。

ネヴィルの妻ケイのボーイフレンドのテッド・ラティマーは、
頭の骨格が変わっている。

ネヴィルの前妻のオードリィ・ストレンジ(オードリー)は、
左耳たぶに、子どもの時に犬に咬まれた傷跡がある。

オードリィの遠い従兄のトーマス・ロイドは、
子どもの頃の地震による事故で右腕が麻痺している。

ネヴィルの妻ケイ・ストレンジの赤毛は、身体的特徴とは言えないので、
ケイ以外はみんな怪しいわけです。

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、
ドラマには存在しなかった、アンドリュー・マクターターという
自殺に失敗した男の正体が気になって仕方なかったのですが、
意外にあっけなかったというか…彼の存在から、ラストもドラマとは少し違いました。

昔は内外の推理小説も読みましたが、誰が犯人か知りたいという誘惑に負け、
途中で結末を読んでしまったことも度々…

それ以上に私には向いていないと思えるのは、ミステリー小説の要素として、
陰謀、復讐、憎悪、愛憎、そして殺戮といったものがあり、
爽やかな読後感は得られないからなのです。
…あとの2冊、読む自信がないわ…

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