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アガサ・クリスティー『復讐の女神』…(2)

ジェースン・ラフィール氏が生前に手配した、
2~3週間の<大英国の著名邸宅と庭園めぐり>バス・ツアーに出発した
ミス・マープルが、<旧領主邸(ドラマには無かった)>に滞在した辺りから、
それまで集中できなかったことが嘘のように、ミステリーの世界に入り込みました。

映画やドラマは原作とは違うものですが、
ラフィール氏は一代で財を成した大富豪で、息子・マイクルは終身刑の身なのに、
ドラマでのラフィール氏はドイツ人の文学者で、
ドイツ軍の脱走兵だったマイケルは、ツアー客の一員でした。

また、原作では甥のレイモンドは登場していなかったし、
ツアーの参加者も、全く別人ばかり…犯人もツアー客ではなかった…

ラフィール氏の手紙の最後には、
「公道を水のように 正義をつきない川のように 流れさせよ (アモス書)」
と書かれていました。

つまり、ミス・マープル(ネメシス)に託したラフィール氏の目的とは、
「無実の息子を救い、真犯人を突き止める」ことだったのです。

ミス・マープルが自らを「正義の使者」と名乗った通り、
彼女の言動は「復讐」とは結びつかない…
やはり、ネメシスは「復讐」より、「義憤」と訳すのが適当だったのではないでしょうか。

ミス・マープルがラフィール氏から受け取った報酬は、2万ポンドでした。
(ドラマでは500ポンド)…時代設定は判りませんが(ドラマは19551年)、
現在の貨幣価値に換算したら、どの位なのでしょうね…?
きっと、相当な額だったのでしょうね。

ところで、ラフィール氏の手紙をドラマで蓄音機にしたのはなぜ?
ラストのミス・マープルの意味ありげな表情も、謎のままだったし…
演出家(又は脚本家)のみぞ知る、でしょうか?

動画サイトで確認したところ、ジェラルディン・マクイーワンの『復讐の女神』より、
ジョーン・ヒクソンの『復讐の女神』の方が、原作に近かったです。

アガサ・クリスティー『復讐の女神』(Nemesis)
乾 信一郎/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫

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