『幸田文 台所帖』
『幸田文 台所帖』 幸田 文/著 青木 玉/編 平凡社
『幸田文 集』 日本文学全集59 新潮社
(『幸田文 集』は、昔古本屋で買った本で、
作品は、「終焉」「勲章」「髪」「黒い裾」「雛」「流れる」「おとうと」)
この『幸田文 台所帖』も『きもの帖』『しつけ帖』と同じく、
幸田文さん(1904~1990)の一人娘の青木玉さんが編集したものですが、
文章の美しさもさることながら、料理への心づくしには感心しました。
二冊と同様に、書かれた年号と年齢が記されています。
(この三冊は決してエッセイ集ではありませんよ。随筆集ですよ。)
文さんが父・露伴から本格的に家事全般を仕込まれたのは、
女学校に入学した時(13歳)、
冷蔵庫はあっても(もちろん氷)家電の無かった頃の台所仕事は、
現代とは比較できないほど大変だったことが分かります。
炊飯器、電子レンジ、電子レンジ、タイマーがあり、蛇口からはお湯が出て、
スーパーやコンビニは24時間営業し、食品には賞味(消費)期限が印刷され、
調理器具一切が無くても、お金さえ出せば困らない時代ですから…
つくづく便利な時代で良かったと思わずにはいられません。
「滋味対談」(辻嘉一さんとの対談)は、興味深かったです。
料理に対する明治生まれのお二人の厳しさが伝わり興味深かったです。
「私のメニュウ」では、文さんの献立が紹介されていました。
すべて「一汁二菜+香の物」で、現代人には物足りなく思えるでしょうが、
走り、旬、名残りには、それぞれ適した調理法があって、
今では失われた季節感のある献立(しかも一切手抜きのない)こそ、
私には贅沢で理想です。
一番感銘を受けたのは、「うそとパン」。
…何て優しい人たちなんでしょう…鬼の目から涙がこぼれました。
“是非読んでみて!”と、思いました。
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