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『幸田文 きもの帖』

20100224
『幸田 文 きもの帖』 幸田 文/著 青木 玉/編 平凡社

とにかく興味深くて、読み始めると深夜になっても止められないのです。
時代からでしょうか、それとも生まれや育ちでしょうか、
丁寧で美しい文章には少しの無駄も無く、
幸田文さん(1904~1990)の真面目で勝ち気だった性格が伝わるのです。

それぞれの随筆には、初出の年(西暦)と、
文さんの満年齢が記されていることも、とても参考になりました。
(編集は一人娘の青木玉さん)

明治37年(1904)に生まれ、平成2年(1990)に86歳で生涯を閉じるまで、
(例外を除いて)きものを着続けていた幸田文さんですが、
特別、きものが好きだった訳ではなかったと言います。

戦後、みんなが洋装をし出した時、洋服を着ようかと考えたこともあったけれど、
当時は、一から揃えるだけのゆとりも無く、物のない時代を体験したので、
きものは解けば洋服だって作れるけれど、
体型に合わせて裁断してしまう洋服ではそうはいかない、と考えたそうです。

結婚が決まるまでは、継ぎ接ぎだらけの長襦袢だったことから、
新調した長襦袢が、とても軽くて、頼りなく感じられたことや、
花嫁衣装を買いに、たった一人で、高島屋へ行った時の、
寂しく心細かった気持ちは、花嫁衣装に縁の無かった私でさえ泣けました。

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