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『母・住井すゑの横顔』

20100222
『母・住井すゑの横顔』 犬田章/著 (大和書房)

『母・住井すゑの横顔』の著者の犬田章(いぬたあきら)さんは、
犬田卯(しげる)、住井すゑ(本名犬田)夫妻の長男として大正12年に生まれ、
兵役後は、文部省、総理府、大蔵省、大学教授だった経歴ですが、
大蔵省時代は、池田勇人首相の経済ブレーンの一員だったそうです。
(母親が旧姓をペンネームにしていたので、息子だとは気付かれなかったとか。)

ちなみに、
弟の犬田充(いぬたみつる)さんも大学教授(現在は分かりませんが)
妹(長女)かほるさんは、夫とともに母親の執筆活動を支え、
次女増田れい子さんはジャーナリスト、随筆家として活躍されています。

この本には、アナキストのレッテルを貼られたこともある両親と4人兄妹の、
意外な暮らしぶりが、愛溢れる文章で綴られていました。

机が一台も無い家庭も珍しくなかった時代に、
6人家族の犬田家には、机が6台あったのも両親が作家だからでしょうが、
卒業式の集合写真で、着物姿の生徒の中で、
章さん一人だけが、母すゑさんの手編みのセーターというのは、
母親が世間体を気にしない性格だからでしょうか…?

増田れい子さんの著書にもありましたが、
両親の職業柄、書物だけは沢山あったけれど、教育熱心なタイプではなく、
進路や結婚についても、一度も口出しされたことがないというのも、
いかにも住井すゑさんらしいです。

いかにもといえば、章さんが小学五年生の時に、在校生代表として、
卒業式で送辞を述べることになったのですが、すゑさんが文章を作ったそうです。
当然、送辞には雛形があったのでしょうが、
文筆家としても、思想家としても気に入らなかったのは…と回想されていました。

執筆活動(筆だけで一家を養っていた)、育児、畑仕事だけでなく、
夫が病弱だったため、すゑさんが付きっきりで看病に当たり、
今なら薬事法に触れそうですが、投薬、注射もすゑさんがしていて、
その知識で、病気の村人も救っていたというからすごいです。

しかも、裁縫や編み物が得意で、家族中のものを作り、
セーターなどは一晩で編んでしまったというから、まさに超人的です。

また、牛久に移る前は東京暮らしだったこともありますが、
仕事の関係上、月2回は上京していたので、当時としてはハイカラな家庭で、
カレーライスを作ってくれたり、おやつ用に缶入りカルケットが常備していた…

両親はパパママで、兄妹は上下関係なく「ちゃん付け」で呼び合っていて、
それは末っ子のすゑさんが、兄姉みんなから呼び捨てされていたことが、
幼心に不公平と感じていたからなのです。

私も小さい頃から、家族だけでなく、親戚の大人だけでなく、年上のいとこからも、
呼び捨てされることが、とても嫌に思っていました。
口に出したことはありませんが…

必要なものは全て買ってくれて、学費も出してくれても、
「お金は子どもを卑しくする」という考えから、小遣いもお年玉もなく、
家の手伝いをしても、お駄賃は貰えない…

でも、夫が稼がない人なので、劣等感を持たないようにと、
財布は全て夫に渡していたそうで、子どもたちには、
「パパからもらいなさい」と言っていたと言いますから、妻の鑑です。

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『牛久沼のほとり』 住井すゑ著 (暮しの手帖社)
『八十歳の宣言』~人間を生きる~ 住井すゑ著(人文書院)
『夜あけ朝あけ』 住井すゑ著 (新潮文庫)
『愛といのちと』 犬田 卯・住井すゑ著 (新潮文庫)
『向かい風』 住井すゑ著(新潮文庫) 

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