『わが生涯』 ~生きて愛して闘って~
『わが生涯 ~生きて愛して闘って~』 住井すゑ/著 岩崎書店
長男・章さんを抱く21歳の住井すゑさん(1923年)
この本は、住井すゑさんと次女の増田れい子さんの対談集ですが、
当時92歳の母に、65歳の娘が根掘り葉掘り質問しています。
今までにも、お二人の著書は読んでいるので、特別驚くようなこともないのですが、
普通の母と娘にはない内容の会話ばかりでした。
靴下のエピソード(「長男の召集」)は知っていましたが、
そのことで、手紙で、連隊長と丁々発止とやり合ったことは知りませんでした。
…ぬれた靴下の替えがないというので、ハンモックを解いて編んで送ったところ、
青いラインから私物とばれ、取り上げられたうえに罰をくわされた…
“青い線の飾りはせめてもの親心だ、そんなことも分からないのか。
履き替えの靴下の予備も出せないような軍隊では戦争は負けだ。
戦争を早くやめろ、いつまで戦争をやっているのだ。
この負けいくさをいつまでもやっているということは、国民にとっても迷惑だ。
敗戦だという私が国賊だというなら軍事裁判を開け、
私はその席で明らかに敗戦だということを証言する。そして国賊として処刑しろ。
そのかわり、この戦争が負けたときには、
天皇はじめ陸海軍将校みんな腹切るという一札と交換条件だ。
それを各新聞に発表して、わたしは軍事裁判を受けて死刑になりましょう…”
(以上、抜粋を要約)
信じられないことには、最後には兜を脱いだ連隊長から、
“お母さんのおっしゃるとおりです”という手紙が来たそうです。
下士官になって、軍刀を作らなければならないと言われた時も、
“敗戦がわかってるのに、なんで軍刀なんかいるのか、
そんな無駄なことは出来ない、貧乏国のくせにいつまで戦争をやってるんだ”
と書いて送ると、またしても連隊長から、“お母さんのおっしゃるとおりです”と…
軍刀は各個人で用意するもので、日本刀を短く切って作るのだそうですが、
その費用は、当時のお金で300円だったとか。
地下で反戦活動をしていた人達のことは知っていますが、
兵役は人質に取られたとも思えるのに、息子の上官とやり合うなんて
勇気があるというか、恐れを知らぬというか…何事もなくて良かったですが、
もし男親だったなら、タダでは済まなかったかも知れませんね。
人間平等を訴え、あらゆる権力を否定し闘った住井すゑさんの語録です。
「人間平等を書くのに、男だと矛盾が大きい」
「天皇制も人為だし、被差別部落も勿論人為的につくられたものだから、
これは偽り。偽りからは解放されなければならない。」
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