『稲妻』…(2)
「稲妻」は、2日の夜には読み終えていたのに、
なかなか感想を書く気にならなかったのは、
人間の持つエゴや打算、欲望といった醜さばかりの登場人物たちに、
いささいか疲れてしまったからなんです。
林芙美子の体験に基づくものなのでしょうね…
夫が有りながら男にだらしない長女の縫子、人が良いだけが取り柄の長男の嘉助、
気が弱く人に流されてしまう次女の光子、
そして、一人だけ女学校を出て、交換手をしている三女の清子…
この4人は、母おせいの子供たちなのですが、4人とも私生児で、
しかもそれぞれの父親が違うという身の上…
兎口(口唇口蓋裂)という先天的な障害の治療跡のある末っ子の清子は、
姉たちとは違って、まともなタイプなだけに、
母や2人の姉(特に縫子を)を軽蔑し嫌悪していて、かなり冷酷…無理もないけど…
男性に潔癖な清子は、意気地のない縫子の夫・龍助のことも、
誠実さの欠片もない光子の夫・呂平(死後に妾が赤ん坊を連れて出現)のことも、
軽蔑していますが、縫子光子姉妹と関係を持ちながら、
清子にも暴力的に言い寄る中年男の綱吉には、強攻に拒絶するのですが、
昔は、商売にも女性にも飲食にも貪欲な綱吉みたいな男のことを、
遣り手とか甲斐性があるとか言ったのでしょうか…?
だったら甲斐性なんてなくてもいいわ…
唯一、好意的に描かれていたのは、
家族に決別しようと家出同然に自立した清子の新居(3帖の貸間)
の向かいに下宿している国宗というピアノを弾く青年だけでした。
私は、夫の手塚緑敏さんがモデルだったのでは?
などと勝手に想像してました…
事細かく描写しているので、どろどろした人間関係が目に浮かんできて、
舞台かなにかを見ているかのように、汗や息まで伝わりました。
「稲妻」は、1952年に、高峰秀子さん主演、成瀬巳喜男監督の手により、
また、1967年にも、倍賞千恵子さん主演で映画化されたそうですが、
小説だけで充分といった感じです。
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