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おこげのおむすび

『バナナは皮を食う』に、“おむすびの思い出”という括りがあって、
吉川英治、佐多稲子、幸田文、サトウ・ハチロー、辰野隆、高濱虚子の各氏の、
おむすびへの思いが綴られていました。

母親が作ってくれた、懐かしい「焼きおむすび」…
白米の美味しさが分かる、「塩だけで結んだおむすび」…
浅草海苔が手に入りにくかった地方の、「とろろ昆布で巻かれたおむすび」…
ご飯に、印刷が写っていても有り難く頂いた、
戦時中の、「新聞紙に包まれたおむすび」、等々…
中でも、複数の方々が、とても美味しかったと語っていたのは、
おこげ
おむすびでした。

私もそう…
子供の頃、実家では電気炊飯器を使うようになる前は、ガス釜でしたが、
それ以前は、ガスコンロに、おかまを乗せて、ご飯を炊いていました。

ご飯が炊き上がって蒸らし終わると、おかまを廊下の端に運び、
二本のしゃもじを使って、炊き立ての熱々ご飯を、おひつに移し替えるのです。

おかまの底に、少しばかりのおこげが出来ている時があって、
(母の名誉のために付け加えるならば、
おこげと言っても、焦げ茶色ではなく、茶褐色のものでした。)

母は、そのおこげに、少しの醤油を掛け、重い木の蓋をして、少々蒸らしてから、
お腹を空かした子供たちのために、
夕食に差し障りのないほどの、小さなおむすびを結んでくれました。
それは、にぎり寿司より、やや大きめの大きさと形でした。

私も、あの、ほかほかで芳ばしい美味しさは忘れられません。
でも、もし今、自分で作ってみても、
あの時ほど美味しいとは思えないでしょう。

きっと、結びたてを、母の手から直接渡されて食べたから、
よけいに美味しく感じたのかも知れません。

ところで、今日は冬至、夕食には南瓜を頂き、
これから(1時間後)柚子湯に浸かります。

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