『津島家の人びと』…(2)
第三章の「斜陽」は、太宰の小説とは無関係で、
津島家だけでなく、津島家ゆかりの大地主たちの一族が
戦後の農地改革によって、没落していく様子が書かれていましたが、
まさに、「おごれる平家も久しからず」の感ありでした。
元々、支配階級というのは、
弱者からの非道な搾取を繰り返すことによって成立したわけで、
太宰はそんな不条理と自身の矛盾から苦悩し自殺未遂を起こしたのでしょう。
政治家というものは(政治家だけではないですが)、
自分が築き上げた地盤を、より近い人に継がせたいものらしく、
文治さんも、御多分に洩れずだったのですが、
一人息子の康一さんは、親の意向とは裏腹に、演劇の世界に進んだため、
太宰治の長女園子さんの夫の津島雄二さんが引き継ぎ、
津島雄二さん引退後は、雄二・園子夫妻の息子の淳さんが…でも落選…
(文治さんの娘婿の田澤吉郎さんも政界で活躍されました。)
子供のいなかった康一さんが2004年に73歳で病死されたことで、
津島家の直系は絶えたことになりましたが、
政界では、兄が家名と政治家としての保身のために除籍した弟の子孫によって、
引き継がれていくとは皮肉なものです。
私は、この本を読みながら、もう一つの一族を思い出していました。
それは、『火の山-山猿記』(津島佑子・著)の石原家(美知子夫人の実家)、
津島家は、学者の家系の石原家とは余りにも違う一族でした。
「おどさ、なんぼ偉い政治家でも、三十年、五十年と経てば、文治の名は消える。
が、太宰の名は残るな。」
『津島家の人びと』 朝日新聞青森支局/著 朝日ソノラマ
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