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夕顔日誌

『斜陽』に登場する直治(かず子の弟)は、
『斜陽日記』の武(静子の弟)とは別人で、津島修治その人なのでしょうね。
直治が書いた「夕顔日誌」を読んでそう感じました。

「 戦争。日本の戦争は、ヤケクソだ。
 ヤケクソに巻き込まれて死ぬのは、いや。いっそ、ひとりで死にたいわい。

 人間は、嘘をつく時には、必ず、まじめな顔をしているものである。
この頃の、指導者たちの、あの、まじめさ。ぷ!

 人から尊敬されようと思わぬ[#「思わぬ」に傍点]人たちと遊びたい。
 けれども、そんないい人たちは、僕と遊んでくれやしない。

 僕が早熟を装って見せたら、人々は僕を、早熟だと噂した。
僕が、なまけものの振りをして見せたら、人々は僕を、なまけものだと噂した。
僕が小説を書けない振りをしたら、人々は僕を、書けないのだと噂した。
僕が嘘つきの振りをしたら、人々は僕を、嘘つきだと噂した。
僕が金持ちの振りをしたら、人々は僕を、金持ちだと噂した。
僕が冷淡を装って見せたら、人々は僕を、冷淡なやつだと噂した。
けれども、僕が本当に苦しくて、思わず呻いた時、人々は僕を、
苦しい振りを装っていると噂した。
 どうも、くいちがう。

 結局、自殺するよりほか仕様がないのじゃないか。
 このように苦しんでも、ただ、自殺で終るだけなのだ、と思ったら、
声を放って泣いてしまった。
」~『斜陽』夕顔日誌より抜粋~

シャイで感受性が人一倍強く、生に対しての執着心も乏しかった太宰ですから、
山崎富栄さんが現れなかったとしても、また胸の病が無かったとしても、
天命を全うすることは無かったようにも感じました。

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