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『斜陽』と『斜陽日記』

『斜陽』を読んだのは十代の頃だったので、内容は殆ど覚えていないのですが、
もしかしたら、最後まで読まなかったような気もするのです。

今読み返してみると、当時は(今もですが)、賢治や多喜二、徳永直などに
傾向していたこともあって、戦後の苦しい時代であってさえ、
自分とはあまりに違う元華族の日常生活や言葉使いなどに、
嫌悪感を覚えてしまったのかもしれません。

『斜陽』は太田静子さんの日記を参考に書かれた小説ということなので、
そちらも是非読んで見たいと、図書館から借りて来て読みました。

太田静子さんは太宰の死後、生活苦から、井伏鱒二たちとの約束に背き、
『斜陽日記』を出版されたそうですが、余りにも酷似した箇所が多かったため、
『斜陽』から捏造したのでは、と言われて苦悩したそうです。

2冊を照合した訳ではないですが、そっくりそのまま写したのでは?(太宰治が)、
と思えるエピソードが多くて驚きました。

『斜陽日記』は元々日記のため、
『斜陽』のような高度な文学性は感じられない代わりに、
最初こそ辟易していた言葉遣いにも、生身の女性の息吹が感じられ、
別世界の太田きささんと静子さん母子に感情移入してしまいました。

ところで、『斜陽』には太宰らしき上原二郎や、彼の妻と長女が登場しますが、
『斜陽日記』には、太宰を暗示させるような一文が数カ所あっただけでした。
出版の際に、差し障りのある文章を削除したのかも分かりませんが…

20090815
『斜陽』 太宰治(新潮文庫)~すっかり変色してしまった文庫本~
『斜陽日記』 太田静子(小学館文庫)
私が借りた本は1998年出版のもので、娘の太田治子さんの随筆「母の糸巻」や、
舞台となった「大雄山荘」についの資料なども加えられていました。

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