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浦島さん(『お伽草紙』)

浦島太郎といふ人は、丹後の水江(みづのえ)とかいふところに
実在してゐたやうである。~
~~
~~~浦島は、それから十年、幸福な老人として生きたといふ。

昨夜、ようやく太宰治の「浦島さん」(『お伽草紙』)を読み終えました。

私としては、「カチカチ山」の方が面白かったですが、
「浦島さん」も、まったく意外な内容でした。

この物語の主人公は、浦島ではなく亀なのでしょうね。
浦島は、いわゆる風流人として描かれ、
饒舌な亀は風流人の浦島を、と言うより地上人を辛辣に皮肉っていました。

太宰治も、紛れもない文化人の一人ではあるのですが、
(亀の言葉は)日頃、作者が抱いている、文化人への批判の様に思えました。

浦島の些細な疑問に対しての亀の返答に、
読者の多くが、溜飲の下がる思いだったことでしょう。
でも、一番すっきりしたのは、太宰自身だったかも知れません。

ただ、乙姫についての描写に、少なからず物足りなさを感じたのは、
私が通俗的だからなのでしょうね。

日本人なら、みんな知っている「浦島太郎」の世界を、
このようなお話にするなんて、やっぱり太宰治は凄いですよ。

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