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『回想の太宰治』…(3)

以前にも何かで読みましたが、次の文に太宰の性格が見えます。

 太宰はほんとうに無趣味な人であった。
趣味は遊びだ、逃避だ、と考えていたようだ。
身の回りに、あってもなくてもよいものを置くことが嫌いで、必需品だけを、
それも趣味よりも、機能だけで選んだ品だけを置いて簡素に暮らしたいらしかった。

美術品に関心が無いわけでもないし、知識もあるのだけれど、
蒐集というものは所有欲の塊の様なもの、仕事以外に煩わされることなく、
生活を仕事一筋に絞って生きていこうとしていたとのことです。

また、文筆業でありながら蔵書を持たず、従って書棚もなかった太宰治。
資料として必要な本を買う場合でも、文庫本や軽い小型の本を選び、
それらの本も、そぐ人にやってしまうとか…

やっぱり何不自由なく育った人は、物欲がないのかも知れない…
卑しい生まれの私は、本にだけは執着してしまうようです…

掛け軸についての、こんなエピソードがありました。
“床の間には軸を掛けるもの”との美知子さんの考えから掛けておくと、
褒めてくれた客に、太宰は気前よくあげてしまう…その繰り返し…

ある時は、美知子さんの姉の遺品の軸まで客に上げてしまう。
強く抗議しても、夫は面白そうに妻の顔を見て笑っているだけ…

「床の間には軸を」と思い込んでいたことには理解出来ます。
でも、夫がそういう人と知りながら、なぜ大切な遺品を掛けておいたのでしょう?
惜しげのないお軸では、美知子さんのプライドが許さなかったのでしょうか?

太宰治の肩を持つつもりはありませんが…
                           ~「書斎」より~

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