『カチカチ山』
小さかった頃、家に「カチカチ山」の絵本がありました。
「悪さばかりするタヌキを、おじいさんが捕まえて持ち帰り、
おばあさんに、狸汁を作るようにと言って畑仕事に出掛けますが、
「もう悪さはしないから」とおばあさんを騙し助けても貰います。
タヌキはおばあさんを殺し婆汁にして、おばあさんに化け、
おじいさんに、狸汁として食べさせてしまう…
おじいさんから一部始終を聞かされたウサギは、
おばあさんの仇討ちをする…」
というお話でしたが、縄で縛られ、梁から吊されたタヌキの絵を覚えています。
残酷と言えば残酷ですが、お伽噺や民話は、あくまで「お話」と捉えていたからこそ、
「教訓」として、幼い子供向けの絵本になっていたのでしょう。
でも、太宰治の「お伽草紙」の「カチカチ山」を読んだことで、
初めて、もう一つの残酷ではない「カチカチ山」の存在を知りました。
つまり、“おばあさんもタヌキも殺されない”という内容…
「お伽草紙」は、私が読んだ絵本より、10年位前に書かれたものと思われますが、
当時、既に、“残酷過ぎるから”と、別のものが出版されていたとは意外でした。
太宰治の「カチカチ山」は、「残酷では無い方の話」を元にしてありましたが、
短いし、読めない漢字も無かったので、すぐ読めました。
狸は17歳と偽ってる39歳の中年男、兎は潔癖な美少女という設定で、
鈍感にも、心底嫌われてるのにも気付かず、ストーカー行為を繰り返す醜男と、
純粋で潔癖故に、醜い中年男に嫌悪感を抱き、
冷酷で陰湿な仕打ちを平然と繰り返す、美しき乙女(兎)の物語です。
狸は意地汚く悪食(タヌキですから)、醜く鈍感で嘘つき(タヌキですから?)、
乙女に嫌われる要素いっぱいです…
「仇討ち」は大義名分で、
理屈抜きで憎悪する狸を、自分の世界から葬り消したいという兎の願望…
ストーカーに殺されてしまう女性はいますが、これは逆のパターンですね。
「傍へ寄つて来ちや駄目だつて言つたら。くさいぢやないの。
もつとあつちへ離れてよ。あなたは、とかげを食べたんだつてね。
私は聞いたわよ。……」
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