『光る砂漠』
若い頃の様に、いつでも手の届くところに詩があるわけではないけれど、
それでも秋ともなれば、詩集を開いてみたくなるのですね。
数ある詩集の中でも、とりわけ思い出深い一冊が、
ガラス戸付きの本棚に、大切に仕舞ってあります。
矢沢 宰(やざわ おさむ)さんの『光る砂漠』です。
彼は、中也や立原道造ほどの知名度は無いかも知れませんが、
ごく短い詩でも、散文詩でも、八木重吉を彷彿させる、
優しく清らかで、そして悲しいものばかりです。
< 空が >
空があんまり青いので
かた目をつむって
見たらば
母のような
やさしいものが
よこぎった
俺はうれしかった
< さびしさのおとずれ >
風のように
窓からくびをだして
お前は私をよぶ
私はえんぴつをおいて
冬の中をあるく、
お前は黙って
私の顔をみつめ
私はそおってお前をだく……
お前はときどきくるんだね。
< 再会 >
誰もいない
校庭をめぐって
松の下にきたら
秋がひっそりと立っていた
私は黙って手をのばし
秋も黙って手をのばし
まばたきもせずに見つめ合った
< 風が >
あなたのふるさとの風が
橋にこしかけて
あなたのくる日を待っている
『光る砂漠』矢沢宰 詩集 「若い人の絵本」シリーズ(童心社)より
(余白さえ美しい詩が、横書きにした途端、味気なく見えます。)
病気のせいか、寂しく空しい詩が多いのですが、
私には、共感出来る詩ばかりなのです。
詩は青春そのもの、矢沢 宰さんも永遠に詰め襟姿のままです。
それにしても、いつの間に、こんなに歳を取ってしまったのでしょう。
気持ちは、あの頃と同じなのに…
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コメント
tomoさんコメントありがとうございます。
本棚にあるだけで、幸せな気持ちになる本って、ありますよね。
私にとっても「光る砂漠」は忘れられない青春の思い出…
大切な一冊なんです。
投稿: Michi | 2008年12月 8日 (月) 00:13
こんにちは! 久しぶりにこちらへお邪魔させていただきました。
実は私の本棚にある唯一の詩集が「光る砂漠」なんです
Michiさんとおんなじだ~!なんて、勝手に嬉しくなってしまって書き込みさせていただきました。もうずいぶん本は開いてないんですけど、たぶんこれからもずっと、十代の頃の気持ちのまま大切に持っていると思います。
投稿: tomo | 2008年12月 7日 (日) 16:19