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『秘密の花園』(小説)

バーネットの『秘密の花園』(The Secret Garden,1909龍口直太郎・訳 新潮文庫)、
探し出し再読したところ、やっぱり色々違っていました。

以下、小説と映画の相違点をまとめてみました。

原作では、主人公のメアリー・レノックスは、両親がコレラで死亡したため
イギリスの叔父に引き取られたのですが、
映画では地震が原因で孤児に…
きっと、コレラでは時代にそぐわなかったのでしょうね。

映画では、メアリーと、従兄弟コリンの母リリアスは、双子の姉妹でした。
原作では、コリンの母リリアスと、メアリーの父のレノックス大尉は、
姉弟なのです。

花園の扉の鍵を、映画では、リリアスの部屋に入ってしまったメアリーが、
小引き出しの中に仕舞ってあったのを、偶然見つけた…

原作では、コマドリの導きによって、庭園の地面に埋められていたのを、
見つける。
コリンの父アーチボルト伯爵が埋めてしまっからなのですが、
こちらの方が、封印した感が強いですよね。

コリンの母の死については、
映画では、花園の木に掛けられたブランコのロープが切れ落下。
原作では、腰掛けていた枝が折れて落下したから…

コリンの父を帰宅させる方法として、
映画では、子供達が魔法を使っていたけれど、
原作では、
マーサとディコンの姉弟(12人兄弟)の母であるスーザン・サワビーが、
コリンの父クレイヴン伯爵(映画ではジョン・チンチ)に手紙を出したから。
スーザン・サワビーは、結構、重要な登場人物ですが、
映画には登場しなかったですね。

原作のメアリーは、
性格が悪く、痩せて不器量である点が強調されていましたが、
映画のメアリー・レノックス(ケイト・メイバリー)は、可愛い少女でしたね。

原作のディコンは、森の妖精(パック)のような自然児だったのに、
映画の方は普通過ぎて、詰まらなかったです。

マギー・スミスがメドロック夫人に扮していましたが、
ディコンの母と同級生というから、もう少し若い女優さんでも良かったかも…

映画は、あくまで美しく、メルヘンチックに描かれていましたが、
原作の方は、もっと現実的で、明るい陽光が降り注ぎ、
生き生きとした子供達の笑い声が溢れていましたね。

映画では、メアリー、ディコン、コリンが三角関係風に描いた箇所がありましたが、
原作にはありません。

原作と映画が雰囲気が違う原因の一つに、翻訳の違いがあると思いました。

原作でのヨークシャー訛りは、
「おら…やるだ。」「わからねえだ。」「…ねえだか?」でした。

また映画で、コリンが「コブ(瘤)が出来て死ぬ」と言っていた“コブ”は、
原作では、“せむし”…
これ、現在では差別用語として放送禁止になっているらしく、
NHK放送の字幕には使えないのでしょう。
(名作映画の『ノートルダムのせむし男』を放送する場合には、
『ノートルダムのコブ男』にするのでしょうか…?)

現在は差別用語ですが、翻訳本には、“土人”という言葉も使われていました。
当時(昭和29年初版)は、普通に使われていたようです。

『秘密の花園』に限らず、文芸作品の映画化作品を見る度に、
「原作を読んでいない人には解りにくいだろうな。」と感じます。

小説を映画化する場合、限られた時間内に収めるわけで、
どうしても、「3ページで読む名作」になってしまうのでしょう。
映画化より、TVシリーズ化の方が合っているように思いまね。

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コメント

『秘密の花園』は、映画も素晴らしかったですよね。(DVDに保存してありますよ。)

私の場合、いつも原作が先なので、ガッカリする事の方が多いのです。
(『秘密の花園』のことではないですよ。)

『秘密の花園』の小説を読んだのは40年以上も昔のことで、
おぼろげな記憶しか無かったのですが、
今回読んでみて、改めて上質な作品と認識しましたね。
少々教訓的ではありますが・・・

TVドラマがあったとは・・・知りませんでした!
映像化については、出来れば原作に忠実であって欲しいと思っています。
でも、制作者の考えもあるわけで、多少の違いは仕方ないですね。

それでも、そんな風にされてしまったことを知ったなら、バーネットも嘆くことでしょうね。
子供時代のままでいいのにね・・・

投稿: Michi | 2008年6月20日 (金) 23:54

映画の『秘密の花園』は確にとても美しい作品ですよね。
館の雰囲気も本のイメージより、割りと明るい印象でしたし。
映画と本で、(仕方なくでしょうが)相違がある場合、大コケするものと、どっちも捨てがたいものと別れません?
因みに私は、『秘密の花園』の映画は本と同じくらい好きです。コリンの父親の苦悩がよく描かれていたと思います☆
古いですが、TVドラマは結末が酷かったです(保存してますが…)
なにせ、ディコンを第1次大戦で殺してしまうし、最後はコリンとメアリーのキスシーンで終わるんですもの…。
確に彼らが大人になった時は戦争ですから、巻き込まれるのは分かってますけど…だからこそ描かないでほしいし、チープにキャラクター同士をくっつけるな!って感じでしたっ(+_+)

映画化する側も原作ファンでしょうけど、人それぞれ、まったく受取り方や世界観が違うんですね〜。
それに着目点も。

投稿: I LOVE アボンリー | 2008年6月20日 (金) 21:53

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