『母 住井すゑ』
10年位前のこと、新聞の広告欄で、『母 住井すゑ』の本を見つけた私は、
一刻も早く、読みたいと思いました。
著者は、住井すゑさんの次女の増田れい子さんです。
それまで、住井すゑさんという人は、筆一本で一家を支えた人だから、
当然、毎日のほとんどの時間を、机の前で費やしていたのでは…
などと、勝手に想像していました。
また、厳格で恐い母親だったのでは?とも思っていました。
ところが、『母 住井すゑ』(海竜社)を読んでみて、
自分が、いかに先入観に囚われていたかと言うことを、思い知らされました。
まさに、“目から鱗が落ちる”でしたね。
一家が引っ越しした、茨城県牛久沼での暮らしは、
それまで住んでいた東京の生活とは違い、スローライフそのもの。
↓
村人に開放されていた、村一番の深さを誇る井戸は、
日照りの真夏でも、涸れることはなかったし、
家の前に広がる畑には、丹誠込めた野菜が待っていた…
当時としては、画期的な家屋内のトイレは、夫婦が知識人なればこそ。
かまどで炊くご飯と、みそ汁の香りで目覚める朝…
おめでたい出来事があるわけでもないのに、作ってくれるお赤飯や五目寿司…
また、手作りの素朴なお菓子…
読んでいるだけで、ヨダレが出そうでした。
一番意外だったのは、住井すゑさんが、非常に手先が器用だったことなのです。
それに、仕上げるのが大変早かったとのこと…
和裁は当然のこと、習った事のない洋裁もとても上手で、
写真に写っていた、れい子さん姉妹の洋服はお洒落なものでした。
でも、特別、好きだったのが編み物だったそうです。
(装丁は、住井さんが編んだもの)
何時間も掛かる徒歩での買い物ですが、自分の物を買うことは滅多に無かった。
昔の母親としては、当たり前だったのかもしれませんが、
ただ、信じられないことは、それほど忙しい身でありながら、
作品を書き続けていたことなのですよ。
子供達に、「転んで怪我をすると大変だから、走らないように…」
と言っていたというのも意外でしたね。
本は友達にあげてしまって、今は手元にありませんが、
また読みたくなって、図書館で借りたりしました。
それでも、また読みたい。
と言うより、手元に無いと寂しいのです。
もう書店で見つけるのは難しいでしょうから、ネット注文するつもりでいます…
長男である犬田章さんが書かれた、『母・住井すゑの横顔』(大和書房)も、
読みましたが、『母 住井すゑ』とは違った発見がありました。
こちらも、息子から見た、母親としての住井すゑさんの姿が描かれていて、
とても興味深かったですね。
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