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『母 住井すゑ』

10年位前のこと、新聞の広告欄で、『母 住井すゑ』の本を見つけた私は、
一刻も早く、読みたいと思いました。
著者は、住井すゑさんの次女の増田れい子さんです。

それまで、住井すゑさんという人は、筆一本で一家を支えた人だから、
当然、毎日のほとんどの時間を、机の前で費やしていたのでは…
などと、勝手に想像していました。
また、厳格で恐い母親だったのでは?とも思っていました。

ところが、『母 住井すゑ』(海竜社)を読んでみて、
自分が、いかに先入観に囚われていたかと言うことを、思い知らされました。
まさに、“目から鱗が落ちる”でしたね。

一家が引っ越しした、茨城県牛久沼での暮らしは、
それまで住んでいた東京の生活とは違い、スローライフそのもの。

20080314
『母 住井すゑ』 増田れい子著 海竜社


村人に開放されていた、村一番の深さを誇る井戸は、
日照りの真夏でも、涸れることはなかったし、
家の前に広がる畑には、丹誠込めた野菜が待っていた…
当時としては、画期的な家屋内のトイレは、夫婦が知識人なればこそ。

かまどで炊くご飯と、みそ汁の香りで目覚める朝…
おめでたい出来事があるわけでもないのに、作ってくれるお赤飯や五目寿司…
また、手作りの素朴なお菓子…
読んでいるだけで、ヨダレが出そうでした。

一番意外だったのは、住井すゑさんが、非常に手先が器用だったことなのです。
それに、仕上げるのが大変早かったとのこと…

和裁は当然のこと、習った事のない洋裁もとても上手で、
写真に写っていた、れい子さん姉妹の洋服はお洒落なものでした。

でも、特別、好きだったのが編み物だったそうです。
(装丁は、住井さんが編んだもの)
何時間も掛かる徒歩での買い物ですが、自分の物を買うことは滅多に無かった。

昔の母親としては、当たり前だったのかもしれませんが、
ただ、信じられないことは、それほど忙しい身でありながら、
作品を書き続けていたことなのですよ。

子供達に、「転んで怪我をすると大変だから、走らないように…」
と言っていたというのも意外でしたね。

本は友達にあげてしまって、今は手元にありませんが、
また読みたくなって、図書館で借りたりしました。

それでも、また読みたい。
と言うより、手元に無いと寂しいのです。
もう書店で見つけるのは難しいでしょうから、ネット注文するつもりでいます…

長男である犬田章さんが書かれた、『母・住井すゑの横顔』(大和書房)も、
読みましたが、『母 住井すゑ』とは違った発見がありました。

こちらも、息子から見た、母親としての住井すゑさんの姿が描かれていて、
とても興味深かったですね。

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