『小さな中国のお針子』
2002年フランス映画の『小さな中国のお針子』を観ました。
1970年代初頭の中国、文化大革命の真っ直中、
反革命分子の子として、再教育されるため、
山深い村に送られて来たマーとルオには、過酷な生活が待っていました。
(これ、『ワイルド・スワン』を思い出しますが、
ノンフィクションのに比べたら、やはり、生温さを感じます。)
バイオリンを見たこともない村人に、機転を利かせ、
モーツアルトのメヌエットを、「毛沢東を思って」にしてしまうところには脱帽…
マーとルオは、隣村からやって来た、
仕立て屋の老人と、孫娘の通称、“小さなお針子”と知り合います。
文盲の彼女に、禁じられている西洋の小説を、読んで聴かせるのでした…
(マーとルオ、個性に乏しいと言うか、区別が付き難くて閉口しました。)
↓
“小さなお針子”には、特別魅力を感じなかったけれど、
仕立て屋のお祖父ちゃんが、実に可愛らしかったです。
「ゴリオ爺さん」を燃やしてしまったり、
“一冊の本が人生を変える事もある。嘘ばかりの小説など、もう聞かせるな。
役に立つことを学んだらどうだ。”
と言っていたにもかかわらず、
毎晩、「モンテ・クリスト伯」を聴かせて貰っているうちに、
お祖父ちゃんの仕立てる服が、どんどん西洋化していって…
それにしても、お祖父ちゃんの腕は大したものです。
挿絵を見ただけで作れるのですから、
お祖父ちゃんの職人としての腕前は確かですよ。
私なんかは、趣味の域を超えていないから、とてもムリですが…
バルザックに影響を受け、次第に自我に目覚めていく“小さなお針子”、
(最後まで彼女の本当の名前が分からないのですが…)
二人の青年は、彼女に惹かれ、違った形で愛を捧げるのです。
ルオはストレートに、そして、マーはどこまでもナイトに徹する…
余りにも唐突な27年後…
ノスタルジックなメルフェンの世界から、
近代的な現実に引き戻された気分で興醒めでした。
27年後の“小さなお針子”が写されなかったのが、せめてもの慰めです。
“小さなお針子”も、彼女を愛した二人の青年も、古いミシンも、
なぜか、プレゼントにするはずだった香水も、
そして、青春も、思い出も、ダムの湖底に沈んでいったのでした。
(その為に、27年後が必要だったのかも知れませんね。)
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