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『デッドマン』

ジム・ジャームッシュ監督、ジョニー・デップ主演の映画『デッドマン』(1995年)は、
大変幻想的な作品でした。

『デッドマン』以外で、ジム・ジャームッシュ作品というと『ミステリー・トレイン』
を観ましたが、好みではなかったせいか、ほとんど記憶に残っていません。

『デッドマン』は「ジョニー・デップを観たくて…」だったのですが、
大人向きのお伽噺のような、夢の世界に迷い込んだ様な、
不思議な気分を味わう事が出来ました。

会計士のウイリアム・ブレイク(ジョニー・デップ)は、
就職のため、西部行きの列車に乗っている…
車窓から見える風景が変わる度に、
彼の周りの乗客達の身形も雰囲気も変わて行く。

当時なら、それは当然なことでしょうが、
まるで、タイムマシンに乗って時間を遡って行くようでもあり、
列車自体が、異次元の空間に運んで行く為の道具のようにも感じられ…

到着した町は、正に「無法地帯」そのもの、
理不尽な理由で、就職の約束は反故にされ、
しかも反論出来るような相手ではない。
(狂ったような)社長に追い出されたウイリアムは、町で花売りの女を助ける…

それから先は、出口の無いパラレルワールドに迷い込んでしまったかのように、
全てが幻のような不条理な展開なのです。

存在感のある、哲学者風ネイティブアメリカンの「ノーボディ」でさえも、
時々、「森の精霊」に見えてしまったし…

次々と現れては消えてゆく殺し屋達も、現実的に感じないし、
彼等との殺しのシーンも、テンポの速さや、ざらついたモノクロの画質、
そして、幻想的な森の効果か、残酷さを感じさせない。

この作品でジョニー・デップにセリフは、あったのでしょうか?
もちろんあったはずですが、記憶がないのです。
セリフばかりか、彼には感情もないみたい…何しろ「デッドマン」ですから…

それでも、彼のミステリアスな目に、引き込まれてしまうのです。
…最後には誰も居なくなってしまって…

全体にセリフは極めて少なく、夢の中での出来事のごとく、
はかなく、それ故、お洒落な絵本のようにも感じられたのでした。

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